無印編
第十六話
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ら影の気配を知っていたのか、あっさりと拳を避けていた。それを見て、赤い影も奇襲が破れたと思ったのだろうか、ヒットアンドアウェイの要領で恭也さんから距離をとる。
僕から見ると恭也さんを挟み、道路に着地した赤い影の正体は女性だった。豊満な身体を見せ付けるようなタンクトップに短すぎるズボン。口から見える八重歯が勝気な雰囲気と顔立ちに拍車を掛けていた。これだけならお姉さんで通じたのかもしれないが、彼女は人間と異なる部分があった。ストレートのセミロングを靡かせる頭の頂点にちょこんとある獣耳とお尻の辺りから出ている尻尾である。
「あれは……」
「たぶん、黒い女の子の使い魔だ。僕もさっきまで襲われていたんだ」
使い魔。ファンタジーの世界ではよく聞く話だ。なるほど、魔法そのものがファンタジーの代物であるのならば、確かに使い魔がいてもおかしい話ではない。それに僕らの邪魔をするのも納得だ。彼女がどう思っているか分からないが、僕たちが魔法使いだと認識しているなら、僕たちの増援は確かに好ましいものではない。使い魔でもなんでも使って妨害するのが理だ。
「……お前は、何者だ? どうして、俺たちの邪魔をする?」
僕が聞きたいことを恭也さんが代理で目の前の獣耳をつけた女性に問いかけてくれる。だが、彼女の答えは鼻で笑うことだった。
「はんっ! あんたたちには関係ないね。フェイトの邪魔は絶対にさせないっ! あんたたちはあたしがここでぶっ倒すっ!!」
ざっ、と足を引き、拳を構える獣耳の女性。どうやら、何を聞いても答えてくれないようだった。それは、恭也さんも分かったのだろう。相手が構えたのを見て、恭也さんも腰の小太刀に手を掛ける。
「永全不動八門一派・御神真刀流小太刀二刀術、高町恭也。推して参る!!」
「なんだかよく分からないけど、あんたは邪魔なんだよっ!!」
小太刀と拳が交差する。僕の目の前で、剣士と使い魔の戦いの火蓋が切られたのだった。
◇ ◇ ◇
恭也さんと獣耳の女性との戦いは一進一退の攻防戦だった。
恭也さんの小太刀が煌くが、獣耳の女性のバリアジャケット―――至って普通の服に見えるがバリアジャケットらしい―――のせいで殆どダメージがない。
片や、獣耳の女性の拳は、恭也さんにいとも容易く避けられていた。聞いた話だと『神速』という奥義は、周りがグレーの空間になり、ゆっくりに見えるらしい。交通事故を起こした瞬間のようなものだろう。それを利用すれば、敵の攻撃を避けることは容易いらしい。だから、獣耳の女性の攻撃は恭也さんには当たらない。
攻撃せどダメージはなく、決着の兆しはまったく見られない。お互いに疲労だけが溜まっているようだ。もしも、獣耳の女性がなのはちゃんのよう
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