無印編
第十六話
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顔に言葉の真意を問いただそうとしたとき、なのはちゃんと黒い少女の状況が動いた。
最初に動いたのはなのはちゃん。急に地面を蹴るとそのまま靴に羽を生やすと空高く飛翔する。その速度は速く、あっという間に二十階建てのビルの屋上まで空高く舞い上がっていた。一方の黒い少女は、なのはちゃんが空高く舞い上がったのを見て、恭也さんに視線を移し、僕に視線を移したが、一瞥しただけで、なのはちゃんと同じように地面を蹴ってなのはちゃんを追うように空へと飛翔した。
黒い少女が追うことを確認したなのはちゃんは、まるでここから離れるように高度を保ったまますごいスピードで飛翔する。地面を走るよりもはるかに速いスピード。黒い少女もなのはちゃんに置いていかれるものか、とばかりになのはちゃんを追いかけるようにして空を翔る。
考えなくても分かった。黒い少女は、こちらとの話し合いを拒否した。このままでは確実に魔法を使った戦いに発展しただろう。なのはちゃんは、僕たちに被害が及ばないように戦う場所を移したのだ。
「ちっ、追うぞ、ショウくん」
恭也さんもそれを理解したのだろう。なのはちゃんたちが飛び立った方向へと駆け出そうとした。
しかし、僕は足が動かない。恐怖で震えているわけではない。このまま、僕が行ってもいいのか、という疑問があるからだ。そもそも、僕は、ジュエルシードの暴走体のような人でないものに向けた暴力なら躊躇はないのだが、彼女は明らかに言葉が通じる人間だった。先ほどは問答無用で斬りつけられたが、もしかしたら、という思いがまだあるのだ。
これは、僕が平和主義者だからというわけではない。モラルのようなものだろう。現代の日本では、幼い頃から暴力は最大の悪だと教えられていた。そのため、『三つ子の魂百まで』というわけではないが、暴力は悪だと意識下に刷り込まれている。だからこそ、躊躇させる。
恭也さんなどは、護るために振るう力に対して覚悟ができているから、躊躇はしないだろう。黒い少女がなのはちゃんに危害を加えると分かれば、恭也さんは幼い子どもであろうとも躊躇しないはずだ。
僕が弱いのか、恭也さんが強いのか。ここで問答するつもりはない。
そもそも、僕が恭也さんを追いかけたところで、使える魔法はプロテクション一つだけ。役立たずもいいところだ。むしろ、僕が狙われたときが厄介な的になってしまうだろう。ならば、僕はこのままここに残ったほうが得策なのだろう。
少し前を駆け出している恭也さんに結論を告げようと口を開こうとしたとき、不意に恭也さんの足が止まり、あたりを警戒し始める。同時に恭也さんに襲い掛かる赤い影。
「フェイトのところには向かわせないよっ!!」
赤い影は、恭也さんに奇襲のように殴りかかる。だが、恭也さんは最初か
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