無印編
第十六話
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後に取り残された廃墟のようだった。建物がまったく壊れていないことがさらに恐怖を煽る。まるで、地球上で生きている人間が僕たちだけのようで。もっとも、ユーノくんの話によると時空間をずらすだけだから、この空間に僕たちしかいないのは事実なのだが。
しかしながら、疑問に思う。いつまでユーノくんはこの結界を発動しているのか、と。少なくともジュエルシードは封印が終わった。これで別の魔導師たちはジュエルシードを追えない筈だ。先週の月村邸のように。だが、ユーノくんが結界を解く気配はない。
きょろきょろと周囲を見渡してもユーノくんの姿は見えなかった。
―――ユーノくん? ―――
―――ショウっ! ごめん! そっちに魔導師が―――
念話で語りかけて返ってきた返事はやけに物騒なものだった。その真意を問いただそうともう一度念話で話しかけようとしたとき、僕となのはちゃんを後ろに下がらせるように前に出てくる腕があった。考えるまでもない恭也さんの腕だ。今までにないほどに真剣な目つきをして、腰にある小太刀に手を伸ばしていた。
「―――下がってくれ。敵意を持ったヤツがくる」
恭也さんの答えを証明するように僕たちしかいないはずの空間に現れる一つの影。その影は、ジュエルシードを見つけた路地裏から程なく離れた陸橋の上に降り立った。
影の正体は少女。アリサちゃんのような金髪をツインテールにし、まるでスクール水着のように身体にフィットする黒い服とパレオのように巻かれた短い桃色のスカートと肩から黒い外套を身に纏う少女だ。しかし、その右手に持つのは可愛らしい少女が持つには似つかわしくない漆黒の戦斧だった。
彼女が、件の魔導師なのだろうか。大人のような魔導師を想像していたのだが、少女だったものだから予想外もいいところだった。
恭也さんが今にも小太刀を抜きそうで、なのはちゃんもレイジングハートを構える。情けないことに僕にできることは、二人に前線を任せて後ろに下がることだけだった。
「―――ジュエルシードを渡して」
黒い外套を羽織った少女からの要求は極めてシンプルだった。だが、要求があったからといって、はい、分かりました、と簡単に渡すわけにはいかない。ユーノくん曰く、これはロストロギアといわれるものの中でも高ランクの危険なものに分類されるものらしい。それを突然出てきた魔導師に簡単に渡せるわけがない。
「君は一体誰!? どうしてジュエルシードをっ!?」
僕は彼女たちに問いかける。見た目が僕たちと同じ年代の子どもであるし、いきなり問答無用で襲ってこなかったところをみると話が通じるかも、と思ったからだ。だが、その考えは蜂蜜のように甘く、幻想のようにいとも簡単に打ち砕かれた。
「話す必要はない」
それが
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