無印編
第十五話 裏 中 (なのは)
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の隣は一つしかないのだから。
「ショウ、今から帰るんでしょう? あたしも、帰るから一緒に帰りましょう」
不意にアリサがなのはから視線を外して翔太を誘う。
それは、なのはの睨みを恐れたわけでもない。彼女はなのはを見ていない。まるでいないかのように振る舞い、翔太のみを誘う。
なのはは、それを心ので似非笑う。今日はまだ日が沈んでいない。つまりジュエルシード探しは続行しているのだ。だから、翔太はすぐに断わり、ジュエルシード探しを再開するだろう。なのはの隣で。だから、何も言わなかった。言うつもりはなかった。結果は決まっていると思ったから。
だが、なのはの予想に反して、翔太が考え込み始めた。それはなのはの予想外だった。翔太はいつだって、決まっているとは即断即決だ。ならば、この状況で即断しないのは、両者を天秤にかけているからだ。どちらが、正しいのか。
つまり、翔太にとっては考える要素があったということだ。何所に天秤に掛ける要素があったか分からない。だが、もしも、万が一にも彼がアリサと一緒に帰るなんて言い出したら……。
そう思うと、自然と手が伸びて、翔太の袖を引っ張り、口に出していた。
「ねえ、ショウくん、一緒に帰ろう?」
不意に出た言葉だ。正気なら間違いなく口に出せない。だが、予想外に翔太が考え込んだことで、焦ったあまり口に出してしまった一言だ。口に出した後にしまった、と思うが、後の祭りだ。翔太が考えている途中に邪魔をしてしまった。これで、嫌われたら―――
だが、なのはの不安に反して翔太の表情は嫌悪感を浮かべてはいなかったので、ほっと安堵した。もっとも、さらに困惑した表情ではあったが。
◇ ◇ ◇
結局、翔太となのは、恭也はアリサの車で帰ることになった。できれば回避したかったのだが、翔太が快諾した以上はなのはも従うだけだ。兄は後部座席と運転席が遮られた向こう側の助手席に座り、なのはたち三人は後部座席に翔太を真ん中において座った。
アリサの車の中は静かで、座っている椅子もソファーのようで快適だったが、まったく楽しくはなかった。いや、それどころか不快だった。理由は、分かっている。アリサだ。
彼女は、翔太の隣に座り、翔太を独占している。ずっとなのはを空気のように扱い、翔太とだけ話している。なのはにそれを止められるだけの勇気はない。翔太が嫌な顔の一つでもすれば身体を張ってでも止めるのだが、彼は基本的に笑っている。時々、困惑したようになのはに視線を向けるが、すぐにアリサに話しかけられ、視線をアリサに戻す。
楽しそうに話している翔太とアリサを見ていると心の底がドロドロとした黒いヘドロのようなものが溜まっていく。自分以外と楽しそうに話す翔太を見たくない。そもそも
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