無印編
第十五話 裏 前 (なのは、忍、すずか)
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すぐに病院にっ!!」
「分かりました、お嬢様」
周りを探査してみても、どうやら敵はもういないらしい。ノエルは、大事そうにまだ温かい子猫を大事そうに抱えて邸宅のほうへと駆け出していった。忍も蒼い石をポケットに仕舞いながらノエルの後を追う。
しかしながら、彼女たちはなぜ、このような石に手を伸ばしたのだろうか。もっとも、彼女たちの目的が月村家の邸宅ではないということも否定されてはいないのだが。
彼女たちが逃げた以上は、すべてが闇の中だ。唯一の手がかりは、彼女たちの容姿だけである。そして、彼女の―――特に赤い髪の女性のほうには心当たりがあった。
「帰ったらさくらに連絡を取らないとね」
人狼族と吸血鬼の血を引く一族の中でも頂点に近い叔母の容姿を思い出しながら、忍は厄介なことにならなければいいのだが、と思いながら小さく呟くのだった。
◇ ◇ ◇
月村すずかは、困惑していた。これからどうしよう? と。目の前では、親友といってくれるアリサが物珍しそうにすずかの部屋を見ている。今しばらくは、自分の部屋の物珍しさで誤魔化せるかもしれない。アリサが自分の部屋に来ることは初めてなのだから。しかし、それでも稼げる時間など十分程度のものだ。それでは到底時間は足りないだろう。
―――はあ、どうしてこんなときに。
すずかは数年に一度、忘れたときを見計らってやってくるような侵入者に対して不満を漏らしていた。
ともかく、すずかはどうにかして姉とメイドのノエルが侵入者を撃退してくれるまでの時間を稼がなくてはならない。この部屋ならば、まだ安全だが、他の部屋では危険かもしれないのだから。
すずか付きのメイドであるファリンも今は警護に出てくれている。もしかしたら、万が一のときは自分も戦わなければならないかもしれない。そう思うと、恐怖で震えてくる。しかし、姉も戦っている以上、自分だけがこの部屋で震えているわけにはいかないのも事実だ。もっとも、今はアリサの相手が最優先事項だろうが。
「すずかの部屋って初めて入ったけど、彩が少ないわね」
「そうかな? 私が白が好きだからかな」
すずかの部屋は基本的に白を基調としている。彼女の血筋を嫌悪する心が、彼女に穢れのない白を周りに置くことを望ませるのかもしれない。そのため、すずかの部屋はベットもクローゼットもカーペットもカーテンも小物も基本的に白だった。机は木目だったが、それだけが唯一色の付いたものである感じだ。
だが、しかし、その部屋の中で唯一異彩を放っているものがあった。クローゼットの取っ手にハンガーで掛けてあったフリル付きの黒いワンピースだ。すずかが先日、姉と買い物に出かけたときに買った洋服だ。白が基調となっている部屋の中で、真っ
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