無印編
第十五話 裏 前 (なのは、忍、すずか)
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づかれてしまうだろうが。
幸いにして彼女には、そのような特徴はなかったようだ。夜の一族としての特性が知性に発現した忍が作った特性の麻酔銃から放たれた3発の弾丸は、1発はわき腹に、1発は腕に、1発は太ももにそれぞれ命中していた。
しかし、少女からは血は流れない。なぜなら、ノエルが撃ったのは、睡眠薬入りの麻酔銃だったのだから。一発命中すれば、十分だったのだが、念のため放った三発とも当たってしまった。裏の人間なら避けられることを考慮したのだが、彼女にその素振りはまったく見られなかった。本当に裏の人間なのだろうか。少しだけ疑問が残った。
パタンと蒼い石を前にして倒れる金髪の少女。最後まで石に手が伸びていたのは彼女の最後の意地だろうか。だが、彼女がその意思を手にすることはなく意識は狩られてしまったようだ。
用心しながら少女に近づくノエルと忍。近づいても気を抜くことはなかったが、完全に少女は昏倒しているようだった。
―――少女は本当に何者なのだろうか。
それももうすぐ分かる。月村の邸宅の地下にはこういった侵入者用の部屋もあるのだから。そこで何日かかろうとも聞き出せばいいだけの話である。
さて、この子を連れて帰りましょう。そう言い出す前にノエルが、忍を護るように少女と忍の間に割って入った。
「お嬢様、敵です」
ノエルが短く更なる敵の来訪を告げる。
「フェイトぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
直後、叫びながら風を切り裂くように忍たちの目の前に現れたのは、赤い髪を靡かせ、鋭い八重歯と頭に生えた獣耳が特徴的な豊満な体格を持った女性。忍たちは彼女の容姿を見た瞬間に一瞬硬直してしまった。それが最大の隙を見せることになるにも関わらず、彼女たちは一瞬、意識を止めるしかなかった。目の前の女性が敵かどうか判断できなかったから。
だが、その一瞬の硬直が最大の隙であり、敵に逃走の時間を与えてしまった。
赤い髪の女性は、少女を担ぎ上げると標的であろう自分たちも蒼い石もすべてを投げ出して、逃げることを最優先させるかのように一目散に逃げ出してしまった。待ちなさいっ! と様式美のように叫んでみるが、後の祭りだ。すぐに彼女たちの姿は見えなくなってしまった。後に残されたのは、忍とノエル、子猫、そして、蒼い石だけだ。
「逃しちゃったわね」
忍は、足元に落ちていた蒼い石を回収しながら呟く。少女が最後まで手を伸ばした蒼い石。宝石のようにも見えるが、忍には真贋が分からない。なぜ、こんなものを手にしようとしたのか。一匹の子猫を殺してまで。
忍はそう思い、もう冷たくなっているであろう子猫に手を伸ばし、子猫の身体がまだ温かいことに驚いた。どうやら、気絶しているだけでまだ生きているようだ。
「ノエルっ!
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