無印編
第十五話 裏 前 (なのは、忍、すずか)
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上げてきた自信はある。放課後に簡単なデートに誘ってみたり、休日に買い物につき合わせてみたり。もっとも、彼の場合は、友人同士で出かける程度にしか思っていないのかもしれない。
だが、彼を狙うほかの女の影も見えないし、ゆっくり攻略していけばいいか、と思い続けて早一年。忍からのアプローチにまったく気づかず、忍と恭也の仲は相変わらず友人というカテゴリーから外れていなかった。高校を卒業する間近になると進学してから疎遠になるのではないか、と相当焦ったが、どうにかこうにか彼との縁は繋がっている。
普通の女なら、一年以上もアプローチを続けて気づかない男など諦めるだろう。だが、月村忍は普通の女ではなかった。彼女には高町恭也でなければならない理由があるからだ。
そう、一年生のとき、彼の瞳を見て直感的に理解した。彼が持っている闇の深さと器量の広さを。
―――恭也なら絶対。
そういう核心があるからこそ、忍は一年間も彼女の名前のごとく耐え忍んできたのだ。
だが、そろそろ流石に蹴りをつけたい、と思い、今日に決めようと意気込んでお茶会に誘ったというのに……。
「なにが、『すまない、先約がある』よっ!」
こんな美女の自宅に誘われておきながら、先約があるから、と軽く断わる恭也に激怒する忍だった。もっとも、彼女が知る恭也であれば、先約を反故にするような性格ではないのだが。しかし、断わるときに一瞬も迷わなかった。忍と先約、その両者を天秤に掛けることなく、恭也は、先約を選択したのだ。
それが、女の魅力として簡単に負けてしまったような気がして、忍は不機嫌なのだ。
「ならば、お嬢様から告白されればいいのではありませんか?」
空になったカップに新しく紅茶を注ぎながらメイド服姿のノエルが主人に助言をする。だが、メイドからの助言を主人は、「甘いわねぇ〜」の一言で切った。
「女はいつだって告白するよりも、告白されるほうが好きなのよ」
そんなものなのだろうか? とノエルは考えたが、女―――いや、それ以前に人間ですらない自分が考えたところでせん無きところだろう、と思い、考えないようにした。
メイドであるノエルが傍に控え、主人である月村忍は紅茶を口に含む。周りから聞こえてくる音は適当につけているテレビの音のみだ。周りは殆ど月村家の私有地であり、この家にいる人間も忍とノエルを除けば、妹のすずか、メイドのファリン、そして、すずかの友人であるアリサだけなのだから。
耳を澄ませば、忍の下の階からは、女の子特有の高い音の話し声が聞こえる。
「そういえば、今日はショウくんは来てないの?」
「はい、どうやらいらっしゃっていないようです」
珍しいこともあるものだ、と忍は思った。月村の家でお茶会をするとき、呼ばれるのは
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