無印編
第十五話 裏 前 (なのは、忍、すずか)
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高町桃子は、突然リビングに現れた娘の姿に驚いていた。
時刻は八時。この時間は、ジュエルシードとかいう魔法の宝石探しから戻ってきて、ご飯を食べてお風呂に入って部屋に戻っている頃だ。一度、部屋に戻ってなのはが再びリビングに戻ってくることは今までなかった。
だが、今日に限って、パジャマ姿に着替えたなのはがリビングに下りてきたのだ。
「なのは、どうしたの?」
「テレビ見に来たの」
端的にそれだけ告げるとなのはは、リビングに設置された薄型のテレビの前に置かれたソファーにぼふんと座り、リモコンのチャンネルを上から順番に動かしていき、目的の番組に出会ったのか、チャンネルを回す手を止めた。
今までテレビに一切興味を持たなかったなのはが興味を持った番組とは何だろう? とテレビを覗き込んでみると、そこには、司会者と数人の芸能人がクイズに答えるというありふれた番組だった。内容は、雑学一般を答えるクイズ番組だ。桃子の記憶が正しければ、この番組は結構長いこと続いているはずだ。
しかしながら、桃子は疑問に思う。このクイズ番組は前々からあったはずの番組だ。なぜ、今更興味を持ったのだろうか。
「なのはがテレビなんて珍しいわね。どうしたの?」
「ショウくんが見てるから」
ショウ君―――蔵元翔太。息子の恭也からの話によるとなのはの初めての友達だったはずだ。どうやら、なのはは翔太が見ているからという理由で、この番組を見に来たらしい。
その理由を聞いて桃子も納得した。今から十年以上前の話になるが、確かに桃子も友達が見ているドラマなんかを話をあわせるために興味もないのに見ていた。おそらく、なのはの行動もその類なのだろう。
ああ、ようやく、なのはも友達ができたのだ、と桃子は改めて実感できた。一年間家族で悩んできたことが報われたような気がした。
だから、桃子はテレビを真剣になって見てるなのはを微笑ましく見守った後、流れてきた涙を見られないようになのはに背を向けて夕飯の洗い物へと戻るのだった。
◇ ◇ ◇
週に一度は訪れる休日、西洋風の館に住む主である月村忍は、朝から不機嫌だった。
その不機嫌さを隠すことなく、ソファーに座り、日曜日の真昼間からやっている適当なバラエティ番組を見ながらメイドであるノエルが入れた紅茶を飲んでいた。
当然、テレビの内容など頭に入っていない。ただ、時間を潰すために適当につけたものでしかないのだから。
彼女がここまで不機嫌になっているのは、一人の男性のせいである。その男性の名前は、高町恭也。月村忍がずっと前から懸想している男性である。彼と恋仲になるべき奔走している月村忍だったが、あの朴念仁には、中々通用しない。
それでも、こつこつと好感度を築き
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