無印編
第十四話 裏 (アリサ、なのは)
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のはにとって理想である。あの翔太を追っていた一年生の頃も翔太が主体となった喧嘩など一度もなかった。喧嘩を止めるために仲裁に入るところは何度も見たことがあるが。もし、一年生の頃と同じように仲裁に入った際に負った怪我であれば、そのまま言うはずだ。ならば、やはり翔太が言うようにそれは喧嘩で負った怪我なのだろう。
だが、翔太の言葉といえども簡単に信じることはできなかった。
蔵元翔太はなのはの理想で友達で、人に責められるようなことは決してしないからだ。ならば、喧嘩になるようなことがあるはずはない。翔太は常に正しいのだから。だが、翔太が嘘を言うとは思わない。
思考の袋小路に入ろうとしていたなのはだったが、存外すぐに解は得られた。
―――ああ、そうか。ショウくんは、間違った相手に一方的に殴られたんだね。
なのはにとって、その解にたどり着いたとき、心の底から途方もないほどの怒りがこみ上げてきた。じゅくじゅくと黒い何かがタールのようになのはの心の中を支配していくのが分かった。
なのはにとって理想である翔太が傷つけられたことは自分が傷つけられるよりも痛いことなのだからその怒りは妥当なのものだ。初めてなのはを友人と呼んでくれた大切な人。初めて携帯電話の番号を交換してくれた大切な人。そんな翔太だからこそ、なのはの中で翔太を傷つけた人間を許さないと思う気持ちは、肥大していく。
許さない、許さない、ゆるさない、と呪詛のように心の中で繰り返しながら、それでも表面上は醜いそれを表に出さないように気をつけながらなのははさらに問いを重ねる。
「だれと?」
「え?」
「だれと喧嘩したの?」
翔太を傷つけた誰かをなのはは許すつもりはなかった。翔太が傷ついて、受けた痛みの数分の一を与え、翔太に謝罪させ、もう二度と翔太に手を出さないように言い聞かせるつもりだ。暴力は嫌いだが、力を振るってでも。そのための力はなのはの胸にある小さな宝石の中に宿っている。
―――うん、お父さんも人を護るために力を使いなさいって言ってたし。
そう、これは翔太を護るためなのだ。翔太がこれ以上傷つかないようにするためになのはは自分が持てる力を振るうのだ。
だが、翔太が次に告げたのは、傷つけた人間の名前ではなかった。
「大丈夫だよ。もう、お互い解決したし、謝ってもらったし、もう大丈夫だから」
なのはは困惑した。もしも、翔太が傷つけた人間の名前を出したのならば、話は簡単だ。なのはが『お話』に行けばいいのだから。だが、翔太はその件については解決済みだという。
さすが、ショウくん、と彼を見直す思いがある一方で、それでいいのか、と問いかける部分もある。
翔太を傷つけるような人間だ。もしかしたら、表面上だけで反
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