無印編
第十四話 裏 (アリサ、なのは)
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―――ああ、そうだ。ショウはこんなヤツだった。
一年生のときからそう。自分が貶められようが、八つ当たりされようが、柳の葉のように受け流してしまう。今も殴られた張本人だというのにきっと殴られたこと自体は何も思っていないのだろう。それは、彼が誰かを憎むということが苦手なのか、暴力が嫌いなのかアリサには分からない。だが、だからこそ、代わりにアリサが立ち上がるのだ。
「決まってるじゃないっ! そのケンジってヤツのところよっ!!」
啖呵を切るアリサだったが、翔太はそれを呆れたような表情で受け止め、アリサの行動を否定するように首を左右に振った。
「ダメだよ。これは、僕とケンジくんの問題なんだから」
「あんたの問題なら、あたしの問題よっ! ここで動かなかったら親友として廃るわ」
そう、翔太が言うことは正論だ。確かに、殴ったのが賢治で、殴られたのが翔太ならば、加害者と被害者でアリサは何も関係ないただの第三者だ。
だが、だがしかし、自分の大切な親友が傷つけられたのだ。それを見て、何もせず二人の問題だからと手を出さなければ、それは本当に親友を名乗る資格がなくなってしまう。少なくとも、アリサ・バニングスはそう考える。
翔太とアリサ、お互いににらみ合う時間が続く。だが、不意に翔太が安堵するかのようにアリサの手首を掴んだ手の力を緩め、安堵の息を吐いた。アリサがなんで? と思う前に答えはすぐにアリサの耳に入ってきた。
始業のチャイム。さすがにこれを無視して隣のクラスに行くわけにはいかない。アリサが動かなくて安心している翔太を余所に、アリサは、悔しげに唇をかむしかなかった。
◇ ◇ ◇
「まったく、男の子って単純ねっ!!」
「まあまあ、アリサちゃん。仲直りできたんだからよかったじゃない」
アリサがあまりの状況に頬を膨らませて怒るのに対して、彼女を宥めるすずか。もっとも、アリサの怒りは、朝のものと比べれば格段に些細なもので、もっと意図的に解釈すれば、拗ねていると言い換えてもいいのかもしれない。
アリサが拗ねる原因は彼女たちがお昼のお弁当を食べていた屋上から見える景色に関係している。彼女たちがいる場所からはグラウンドがよく見えていた。昼休みも半分ほど過ぎた今、グラウンドでは男子と少しの女子がサッカーに興じていた。小さい子も大きな子もみんな入り混じってだ。
その中にはアリサとすずかの親友である翔太も当然混じっている。それだけなら、アリサはこんな風に拗ねていていない。彼女が拗ねている原因は、翔太がサッカーに興じていることではないのだ。翔太と一緒にサッカーに興じている同級生が問題だった。
―――佐倉賢治。
昨日、跡が残るほど強く翔太を殴った人物だ。翔太た
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