無印編
第十四話 裏 (アリサ、なのは)
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そして、その支配を無理矢理自分の支配下に戻そうとも思わなかった。
周囲から孤立していた自分をきちんと見てくれたたった二人しかいない親友が殴られたのだ。それを許せるはずがない。ここで怒らなければ、一体、いつ『怒り』という感情を爆発させればいいのだろうか。だから、アリサは自分の中で爆発した怒りに従い、まずは事実を確認するために翔太に詰め寄った。そのぐらいの理性は残っていたようだ。後ろですずかが何かを言っているがアリサの耳には聞こえていなかった。
「ショウっ! ケンジってヤツに殴られたの!?」
一体、自分はどんな人相をしているのか、そんなことに気遣う余裕はなかった。ただ、アリサの表情を見て、翔太が怯んだところを見ていると、どうやらアリサの表情は『怒っています』という感情を余すことなく表現しているようだ。
そして、彼は、何かを諦めたようにはぁ、とため息を吐いて、実に答えたくなさそうに「そうだよ」と答えた。
―――よしっ! 言質はとった。
それだけ聞ければ満足だった。後は賢治ってヤツに制裁を加えれば、終わりだ。翔太の性格から考えるに一方的に殴られただけなのだろう。彼が殴り返す姿なんて想像できない。だから、殴れない翔太に代わって自分がやりかえすのだ。かのハンムラビ法典にも書かれている。『目には目を、歯には歯を』と。ならば、ここで翔太に代わって賢治を殴りに行くのは決して間違いではない。
―――あたしの親友に手を出したことを後悔させてやるんだからっ!!
アリサの怒りは見ているだけの周囲からはとても想像できないほどだった。
自分の容姿が原因で距離をとられていた幼少時代。それが続くと思っていた小学生時代。だが、その想像はたった二人しかいないが、親友たちによってまったく別物へと変化した。また、一人で過ごすと思っていた小学生時代は、二人しかいないけれども、親友がいる実に充実し、楽しい日々を過ごせるようになったのだ。ならば、そんな日々を与えてくれた親友が傷つけられたのだ。アリサの怒りは計り知れないものだった。
だが、アリサの意気込みは、その敵を討とうとした本人によって挫かれることになる。
教室を飛び出そうとしたアリサの手首を翔太が掴んだからだ。
手首から感じられる人の温もりで少しだけアリサは冷静になる。そうやってようやくアリサは翔太が少しだけ困った表情をしていることに気づいた。だが、気づいたところでアリサの怒りが完全に収まったわけではない。だから、決して翔太に向かって怒っているわけではないのに、つい強い口調で問うてしまった。
「なによっ!!」
「どこにいくの?」
翔太の口から出てきた疑問。それはアリサに言わせて見れば愚問だった。だが、翔太は本当に分かっていなさそうだった。
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