無印編
第十四話
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にサッカーをやろうといわれても困惑するだろう。
だが、解決策がないわけではない。この答えを導き出したケンジくんなら難しい話ではないだろう。
「簡単だよ。一言でいいんだから」
―――ごめんなさい。
謝るときに使う言葉。おそらく、これだけで事態は解決するはずだ。
結果だけを言うなら、僕たちは昼休み一杯、グラウンドを駆け回り、ボールを追い回したのだった。
◇ ◇ ◇
放課後、先生にケンジくんとの結末を話し、いつものように今は廊下でなのはちゃんを待っていた。
第二学級の担任先生が出てきた直後に後を追ってきたかのように飛び出してくるなのはちゃん。
「ショウくん、お待たせっ!!」
昨日はぐっすり休めたのだろう。一昨日見たような青白い顔ではなく、安心できるような笑みを浮かべ、元気一杯に見えた。
「いや、そんなに待っていないよ」
僕は、なのはちゃんの様子に安堵しながら、いつものように答える。いつもなら、それじゃ、行こうか、と下足場に向かうのだが、なのはちゃんの視線が僕から外れていなかった。いや、正確にいうと僕のある一点を凝視していた。
その視線の先を追ってみると、僕のガーゼに視線が向けられていることに気づく。
「ショウくん、そのガーゼ、どうしたの?」
先ほどまで浮かべていた笑みが消えて、心配そうに聞いてくるなのはちゃん。
「ああ、えっと、ちょっとね」
流石に殴られた跡だとはいえなかった。
「ちょっと?」
だが、なのはちゃんは僕の曖昧な答えでは見逃してくれないみたいだった。追求するような声で僕に再度問いかけてくる。お茶を濁そうとしても無駄なようだ。はっきりといわなければ、なのはちゃんは納得しないだろう。僕はお手上げだといった感じで、観念して正直に話すことにした。
「昨日、ちょっと喧嘩になっちゃって、殴られたんだよ」
できるだけ大げさにならないように軽く笑いながら言ったのだが、僕が事実を口に出した直後、なのはちゃんの表情が無表情に変わっていた。
「だれと?」
「え?」
「だれと喧嘩したの?」
それは、なのはちゃんが僕に見せる初めての感情だっただろう。おそらく、その中身は怒りだと思う。アリサちゃんが烈火のごとく怒り狂うのだとしたら、なのはちゃんは真逆、その怒りを胸のうちに収めて、表面上は穏やかな水面のように無表情になっている。
どちらが恐ろしいという話ではない。強いて言うなら両者とも危ういというべきだろう。このまま正直にケンジくんの名前を出せば、朝のアリサちゃんのようにケンジくんに喧嘩を売りに行くことは間違いないように思えた。
僕は慌てて先ほどの発言を取り繕う。
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