無印編
第十四話
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ジくんがどうして仲間は外しなんて真似をしたのか理解できなかった。
少なくとも2年生の頃は1年生や3年生の先輩たちと一緒にサッカーで遊んでいたはずだ。つまり、クラスメイト以外ともサッカーで遊ぶことを彼は許容していたはずだ。だが、3年生になってこの様変わり。僕には理解できなかった。だから、問う。
ケンジくんからしばらく答えがなかった。だが、何かを思ったのか口を開いてくれた。
「お前に関係ないだろ」
「いや、あるよ。僕はそのせいで殴られたんだから」
僕はことさらにガーゼの部分を強調して見せた。
それが、彼の反感を買ってしまったのか、ちっと小さく舌打ちをして、ようやく答えてくれた。
「むかついたんだよ。あいつら小さいし、下手だし、遅いし」
それは下級生の子たちだろうか。だが、それは当たり前だ。つい最近まで幼稚園に通っていた子達と僕たちを比べるにはあまりに無謀。下手なのは当然だ。むしろ、彼らは僕たちと遊んでいく上でだんだん上手になっていくのではないだろうか。ケンジくんだってその中の一人だったはずだ。
「ああ、そうだよ。お前の言うことはいちいちむかつくな」
僕がその旨を伝えると、なぜかケンジくんは激昂してしまった。今にも僕に掴みかかってきそうだ。
ああ、これが先生の言っていたことか、とせっかく先生に忠告されたのに無駄にしてしまったな、と思った。
「僕のことは置いといて……楽しくないでしょう? 一人でボール蹴っても」
ポツンとボールに視線を落とすケンジくん。
もしも、僕が先輩から話を聞かなければ、僕が介入しなければ、きっと今日もケンジくんはこんなところで一人でボールなんて蹴らずにクラスメイトたちとサッカーに興じていたことだろう。
それを僕が台無しにした。ケンジくんは、今は一人だ。自分を慰めるようにサッカーボールを蹴っているが、何の解決にもならない。
ケンジくんからの返答はない。つまり、沈黙が肯定を意味していた。
「きっと、下級生の子たちも同じ思いをしたんだろうね」
スポーツは基本的に多人数が集まらないと面白くないゲームだ。5人対5人のフットサルといわれるゲームもあるが、面白さは、多人数のそれには及ばない。
「だからさ、こんなところで一人でボールを蹴ってないで、一緒にサッカーしようよ」
僕の誘いにケンジくんは無言。何かを考えているのかもしれない。だから、僕は何も言わずにケンジくんが何かを言うのを待っていた。
どれほどの時間を待っただろうか。だが、そんな長い時間ではなかったように思える。ようやく彼は口を開いた。
「でも、どうやって入れてもらうんだよ。昨日の今日だぞ」
なるほど、確かに昨日は敵対した僕たちだ。いきなり一緒
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