無印編
第十四話
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はぁ、とため息を吐いていた。
「蔵元、お前の言うことは確かに正論だ。私のような教師から見れば優等生みたいな回答だ。百点満点だよ。こうするべきだのべき論で言えばな。大人なら熟考ぐらいはするかもしれないが、相手は小学生だ。べき論では、通じないことも……いや、それ以上にその正しすぎる正論が逆に相手を怒らせることがあることを肝に銘じておくことだな」
先生からの忠告だった。
なるほど、そんなことはまったく考えたことがなかった。僕はできるだけ正しいことをやってきたつもりだった。誰かにとっての最善になるように頑張ってきたつもりだった。だが、それが逆に怒らせることになるとは。
僕も6年程度、彼らと一緒に遊んで、時に叱りながら過ごしてきたわけだが、目の前の先生は、教師として児童と接しているのだ。
僕以上に僕らのことを知っているだろう。
だから、僕は、先生の忠告を心にとどめておこうと思った。
◇ ◇ ◇
昼休み、僕は中庭を歩いて目的の『彼』を探していた。
今日の昼食は、母親から作ってもらったものをいつもサッカーをやっている面々と共に食べ、その後は、サッカーに興じることにした。昨日の今日だから、やはり僕も加わる必要があると思ったからだ。だが、その心配は無用のようだった。後からやってきた低学年の子供たちも昨日までのように仲間はずれにすることはなかったのだから。
さらに、昨日ケンジくん側についた4人も気まずそうにやってきた。だが、途中で怖気づいたように足を止め、こちらを見てくるだけだ。おそらく僕たちと同じくサッカーに興じてるクラスメイトたちの中には気づいた子もいるだろう。だが、彼らは彼らを見てみぬ振りをした。
昨日のことが尾を引いていることは明白だった。おそらく、昨日の最後の試合のメンバー構成のときに敵と味方ではっきりと線を引いてしまったのが拙かったようだ。つまり、クラスメイトたちにとって彼らは敵なのだ。だから、気づいても声をかけない。声を掛ける理由がないと思っているのだろう。
しかしながら、それでは僕たちもケンジくんたちと変わらない。この場は決して、敵と味方に分けて対立する場所ではない。サッカーで楽しく遊ぶだけの場所なのだから、むしろそういう諍いは排除すべきだ。
だから、僕は彼らに声を掛けた。
結局、彼らもサッカーで遊びたいのだが、4人ではどうしようもなくて、途方にくれていたようだ。
だから、僕は彼らに一緒にサッカーやりたいならどう? と誘った。彼らは僕にそういわれると思っていなかったのか、一瞬きょとんとした表情を浮かべると、どうやって仲間に入れてもらおうと曇らせていた顔を笑みに晴らせていた。
しかしながら、昨日ケンジくん側に回った彼らが僕を
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