無印編
第十四話
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ぁ、そうだよ」
さすがにここで違うと否定しても無駄だろう。真実はもう他の口から零れてしまっている。一度こぼれた言葉は、拾いなおすことは出来ない。ならば、認めるほかないのである。
だが、ここで簡単に認めたのは、失敗だったのかもしれない。
僕が話を肯定した瞬間、アリサちゃんは踵を返して、教室から飛び出そうとしていた。
拙い、と反射的に悟って手が伸ばせたのは幸いだっただろうか。アリサちゃんの手を掴めなかったら、彼女は隣のクラスに駆け込んでいただろう。
「なによっ!!」
きっ、と僕をにらんでくるアリサちゃん。彼女が激昂している理由は僕が殴られたからなのだろう。それ自体は大変ありがたいことなのだが、このまま見過ごして、彼女を第二学級に突撃させるわけにはいかない。
このまま、アリサちゃんを行かせると、僕とケンジくんだけの問題だったはずなのに、彼女まで入ってきてしまう。それは、さらに問題を大きくするだけだ。僕としては、これ以上事を大きくするのは勘弁願いたい。事が大きくなればなるほど、事態を収束させるために払う犠牲は大きくなるのだから。
今ならば、僕とケンジくんの個人的な喧嘩ということが事が片付くのだから。
だから、僕はアリサちゃんを引きとめた。
「どこにいくの?」
「決まってるじゃないっ! そのケンジってヤツのところよっ!!」
どうやら、相当頭に血が上っているようだ。アリサちゃんの中でケンジ君に文句を言いに行くことはすでに決定事項らしい。いや、この気迫から考えれば、四の五の言わずに手が出てしまう可能性もある。
「ダメだよ。これは、僕とケンジくんの問題なんだから」
「あんたの問題なら、あたしの問題よっ! ここで動かなかったら親友として廃るわ」
なんと男前の返事なのだろうか。もしも、アリサちゃんが男の子なら、実に人情に厚い男の子として、女の子にモテモテだっただろうに。いや、中学生になれば、アリサちゃんたちは女子中学校に行くはずだから、その手の子たちにはモテモテかもしれない。
さて、そんな数年後のことはどうでもいいのだ。
確かに、アリサちゃんが僕のことを『親友』だと言いきってくれたことも、僕が殴られたことに激昂してくれたことも確かに嬉しい。だが、今は押さえてもらわないと後々困ることになる。先ほども言ったようにこの手の問題はことが大きくなればなるほどに収束させることが困難なのだ。今は、僕だけが殴られたという一方的な暴力が残っているから、まだ事態は実に簡単だが、これにアリサちゃんが加わると大変だ。僕はケンジくんに暴力を振るわれ、ケンジくんはアリサちゃんに暴力を振るわれ、アリサちゃんと僕は親友という三角関係ができるのだから。
一般的に社会では、如何様な
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