無印編
第十四話
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僕は、サッカーなどでグラウンドの使用権の折半にいくためか、男の子に限って言えば、上級生にも顔見知りは多い。そのため、同級生からだけではなく先輩に当たる人たちからも「どうしたんだよ?」と聞かれることが多かった。
しかしながら、ケンジくんのことやここで話して尾びれ背びれがついて学校中を巡ることを考えると簡単に口を開けることではなく、「昨日、ちょっと喧嘩しまして」としか答えられなかった。
血の気の多い先輩などには「俺が敵をとってやろうか?」と半笑いで言われたが、丁重にお断りすることにした。そんなこんなで、ようやく教室にたどり着いた頃には、後残り5分ほどで始業のチャイムがなろうか、という時間になってしまった。
もっとも、これは怪我の手当てなどをしていて、遅れたこともあるのだが。
「おはよう」
がらっ、と挨拶をしながらドアを開くと、いつもより多くの人間が教室にいるようなきがした。それもそうだろう。僕が来る時間はいつもよりも遅いのだから。
僕が挨拶しながら入ってきたこともあるだろう。一瞬、教室にいる全員の目が僕へと集中した。これはいつものことだ。不意に音がして、自分が知っている音であれば、思わず反射として顔を向けてしまう。普通、それは一瞬だが、今日は違った。全員の顔が僕のほうを向いて固定されてしまっていた。
「え、あれ? どうかした?」
「ショウくん、ガーゼどうしたの?」
僕の混乱に答えてくれるようにクラスメイトの一人が僕の頬を指しながら怪訝な表情で僕に聞いてきた。
「ああ、これは―――」
よもや殴られたなどと正直に答えて事を大きくしたくなかった僕は、適当にごまかせるようにちょっとね、と答えて終わらせようとしたのだが、僕が答えるよりも先に口を挟んできたクラスメイトがいた。
「ショウくん、昨日、ケンジのヤツに殴られてたけど、大丈夫っ!?」
ごまかす前に真実を別の口から語られてしまった。
もし、僕が誤魔化すことができれば何も問題はなかったはずなのに………。
子どもゆえの無邪気さがなんとも物悲しかった。
さて、僕が先に口を出せなかった事実は少し拙い気がしたが、それらはすでに後の祭りだ。それよりも、クラスメイトの子の発言をなんとか誤魔化さないといけない。現に今もクラスメイトの子の発言を聞いて、クラスがざわめいている。
「ちょっと話を―――」
「ショウっ! ケンジってヤツに殴られたの!?」
「アリサちゃんっ!!」
今日はなんとも話を遮られる日である。
話を遮ってきたのは、今度は金髪をなびかせて自分の席から駆け出してきたアリサちゃんである。その後ろからは、アリサちゃん
が飛び出したのを必死に止めようとするすずかちゃんだった。
「は
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