「神」のみぞ知るセカイ
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疑う余地はない。
見てみれば手紙の最後には了承か拒否か丸を付けるよう用意されている。
こんな丸に意味はないが、と楽譜に使っていたペンを回しながら思う。自分には彼らを救う義務がある。抗ったものとして、今抗おうとしている者たちを救わなければならない。非常に面倒だが、それが今の歩の役目だ。
こんな手紙一つに了承すればその役目が果たせるなら簡単だ。
溜息一つ。その思いで歩はペンを動かす
了承、に丸を。
瞬間、光が走る。
「な!?」
驚愕の声を上げる歩をよそに光は強くなる。強い光に歩は目元を覆う。
光は歩の首へと向かい、収束して形をなす。
ふと首元に感じた違和感に歩は手を伸ばし、“それ”に気づく。
「首輪……? 何だこれは」
小さな首輪だ。それが首にかかっていた。手で探るが繋ぎ目など見つからない。まるで接合されているかのように表面はどこもなだらかだ。
(まて、考えろ。考えるんだ。こんな事普通にはありえない。罠だったのか? だがどう見ても只の手紙だった。まるで魔法のようで……バカか俺は。そんな事あるものか。運命や神なんてモノがあっても魔法なんかあるわけないだろう。地獄からだからって悪魔が送ったとでも言いたいのか俺は?)
考える歩の前で光はもう一つ、収束し形を成す。
段々と収まっていく光の中、歩に声が届く。
「あなたが神? 思ったより普通の人間みたいじゃない」
最初に見えたのは大きな鎌。漫画に出てくる死神みたいな、人など簡単に殺せそうなデス・サイス。
次に髪。腰にまで届きそうな長さの、窓から入る光に照らされサラサラと煌く絹糸の様な紫紺の髪。
勝気そうな目。可愛いというより綺麗と言える端正な容姿。ドクロの髪飾り。天女のような羽衣。
見たこともない少女が一人、歩の前にいた。そして口を開く。
「私の名前はハクア・ド・ロット・ヘルミニウム。首席卒業の駆け魂隊一等公務魔。悪魔よ。あんな手紙にオーケー出すなんてバカじゃないの? まあいいわ。これからバディとしてよろしくね“神様”」
そういって少女は手を伸ばす。
まるで三文劇。馬鹿にしたようなセリフ。突っ込みどころ満載のそれに、けれど歩は何も言えなかった。
胸に手を当て酷く自信満々に言う彼女の姿に圧倒され、それだけがひとつの世界のように思えた。
まるで正義や悪に憧れる思春期のような少女は人が見れば残念な子に思われるだろう。けれど余りに堂々している彼女は自分が正しいと信じきった重病患者。
ああ、ここに相応しいな。なんて病室を見回して歩は嘆息する。
神がいるなら悪魔がいてもおかしくない。実際にそんな相手と、そして悪魔の息子と渡り合ってきた自分が否定するわけには行かない。
悪魔の子を救うのが神た
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