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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第十一話 ヴァンフリート割譲条約
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問題は無いと思う。今度はオーディンの話を聞きたいな」

話題を変えようと言うのだろう。残念だな、ケスラー提督。オーディンでも話題になっているのは辺境の事なのだ。
「今オーディンで問題になっているのはヴァンフリート星系は帝国領の一部なのか、それとも黒姫一家の独立した領地なのか、という事だ」
「それはまた厄介な」

ケスラー提督が苦笑した。確かに厄介な問題だ、ケスラー提督は苦笑したがオーディンではこの件で頭を痛めている人間が何人もいる。帝国も同盟も相手を認めていない。政府間の交流は無く捕虜交換も軍が主体になって行っている。

ヴァンフリート割譲条約には帝国と言う文字は何処にも出ていない。条約はあくまで反乱軍と黒姫一家の間で結ばれたものなのだ。そして条約はヴァンフリート星系の主権は黒姫一家に有ると宣言している。ヴァンフリート割譲条約を認めるのであればその主権についても認めざるを得ない。極端な話、黒姫がヴァンフリート王を名乗っても何の不都合もない事になる……。

黒姫一家の主権を無視し帝国領の一部と宣言し軍を派遣すればどうか? その時点でヴァンフリート割譲条約は効力を失う、つまり黒姫一家は反乱軍と交易が出来なくなる。当然だが黒姫は交易を認めたにもかかわらずそれを阻害するような行動を取るのは何故かと抗議するだろう。私がその事を説明するとケスラー提督が溜息を吐いた。

「軍の中には強硬論を吐く人間も居る。ヴァンフリート星系を帝国領として接収すべし。不満を言うようなら黒姫も反乱軍に内通したとして討つべし、とな」
「馬鹿な……、何を考えている……。彼を敵に回すと言うのか……」
ケスラー提督が呆れたような声を出した。

「若手に多いのだ、黒姫を認められない人間が。戦争で大儲けしていると嫌悪している」
「……卿はどう考えている」
ケスラー提督が私を見ている。じっと息を凝らして確かめるような視線だ。

「私は反対だ。そのような事はすべきではないと考えている。信義にもとるしなによりも危険だ。卿と話していて益々そう思った。味方にして利用すべきだ、その方が遥かに利益になる」
「……」
大きく息を吐いた。安心したのだろう。

「黒姫が反乱を起こすなら良い、そういう単純な人間ならな。だがおそらく彼は反乱など起こさない。あっけない程に黙って引き下がるはずだ。そして静かに時を待つ、帝国に報復する時を。その報復は手酷いものになるだろう……。私だけではない、皆そう考えている」
「皆?」

「艦隊司令官は皆だ。常に我々の上を行く男だ、帝国と反乱軍の隙を突いてイゼルローン要塞を攻略する男だ、感情で反乱などは起こさんだろう。反乱を起こすときは帝国を潰す覚悟で来るはずだ」
ケスラー提督がまた息を吐いた……。

「反乱の前に辺境で独立運動が起きかね
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