第十一話 ヴァンフリート割譲条約
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ったのだろう」
「なるほど、酷い話だな。あの男は主戦派だったと聞いている。それが逃げるとは……、まるでリッテンハイム侯のようだな」
私の言葉にケスラー提督が声を上げて笑った。
「後を引き継いだジョアン・レベロには人質解放の問題と艦隊再建の問題が託された。人質解放に金を払えば艦隊再建は難しくなる、かと言って人質を見殺しには出来ない、頭が痛かったはずだ」
「うむ」
「黒姫は交渉の最中に交易を認めるなら身代金は下げると言ったようだ。レベロ議長はそこに注目した。相手が交易を求めるならそれを利用すべきだと。或いは黒姫がそういう風に仕向けたのかもしれない」
「それがヴァンフリート割譲か」
イゼルローン要塞攻略で得た捕虜は約三百二十万人。それに対し反乱軍が最終的に支払った身代金は二億帝国マルク。一人頭に換算してみれば六十帝国マルクに過ぎない。相場を十万帝国マルクと見ればコンマ一パーセントにも満たない金額で取引をした事になる。つまり黒姫はそれでも利が有ると見た……。
「正確には黒姫にヴァンフリートを開発させ交易相手にする、という事かな。ヴァンフリートは恒星が不安定で八個ある惑星全てが劣悪な自然環境になっている。そのため入植は行われていない。しかし鉱物資源はそれなりに有るようだ。開発がされなかったのは帝国領に近く危険だったからだろう」
「一度戦いが有ったな」
私の言葉にケスラー提督が頷いた。帝国歴四百八十五年にヴァンフリートで反乱軍との戦いが有った。今から四年前の事だ。自分は参加しなかったが酷い混戦だったという事だけは聞いている。
「ヴァンフリートは同盟の発展になんら寄与していない、レベロ議長はそう言ったそうだ。そのヴァンフリートを黒姫に割譲し開発させる。鉱物資源の半分を反乱軍に売らせる。反乱軍は宇宙艦隊を再建する急務が有った。鉱物資源は幾ら有っても十分と言うことは無い。反乱軍は新たな原料供給源を確保し黒姫は反乱軍にとって新たな原料供給者になったわけだ」
「なるほど、それが利か……」
私の呟きにケスラー提督が頷いた。
「ヴァンフリート割譲は理で考えれば屈辱でしかない。反乱軍内部の主戦派はかなりレベロ議長を責めたようだ。しかし利で考えれば屈辱でもなんでもない、旨味の有る取引でしかなかった。反乱軍にとっても黒姫にとっても帝国にとってもだ」
「帝国にとっても?」
よく分からんな、今までの話では反乱軍と黒姫、辺境に利が有るのは分かるが……。ケスラー提督が私を見て笑った。いかんな、呆れられたか。
「ヴァンフリートで採掘された鉱物資源の半分は辺境星域に届く。製錬され民生品、軍用品に利用される。軍用品はイゼルローン要塞と黒姫一家に納められ、民生品は辺境で使われている」
「なるほど……」
頷いている私を見てまたケスラー提督
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