第十一話 ヴァンフリート割譲条約
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「それにしてもオーベルシュタインが憲兵総監か、嫌な予感がする」
「変に暴走しなければよいのだがな」
「ヴェスターラントか」
「うむ」
リップシュタット戦役後、オーベルシュタインは幾つかの嫌疑で取り調べを受けた。リヒテンラーデ公との内通の嫌疑は晴れたが彼がヴェスターラントを見殺しにしようとした事、その事でローエングラム公を欺く様な行為をした事が明らかになった。参謀のするべき事に非ず、公の判断で総参謀長の任を解かれた……。
「まあ、上手くやって欲しいものだが……。ところでメックリンガー提督、昨年九月の末に反乱軍と黒姫がヴァンフリート割譲条約を結んだが政府はあれをどう見ているのかな。有効とみているのか? それとも黙認しているだけなのか……。私はあの条約締結直後にオーディンを出たのでその辺がよく分からんのだが……」
ケスラー提督が幾分首を傾げている。
昨年九月の末、反乱軍と黒姫一家の間で有る条約が結ばれた。ヴァンフリート割譲条約、イゼルローン要塞の捕虜三百二十万人を反乱軍に戻す代わりに反乱軍は身代金二億帝国マルクを支払いヴァンフリート星系を黒姫一家に譲るという内容の条約だった。
「認めざるを得ない、そういう状況だな。反乱軍との交易を認めたのはローエングラム公御自身だ。ヴァンフリート割譲条約は交易について触れている。割譲は通商の条件の一部と主張されれば否定は出来ない。実際ヴァンフリートから産出された鉱物資源が反乱軍との交易に使われている」
「なるほど」
喉が渇いた、ワインを一口飲む。
「私の方からも聞きたい、交易はかなり活発に行われていると聞いたが本当なのか?」
私の問いかけにケスラー提督が頷いた。
「本当だ、黒姫一家はヴァンフリートで採掘された鉱物資源の半分を反乱軍に売り、民生品を買い入れ辺境に持って行っている。民生品の品質は帝国よりもあちらの方が良いからな、大分売れているらしい。辺境の発展にもかなり役立っている」
「しかし、反乱軍にとって黒姫は敵だろう。簡単に交易が出来るものなのか? どうもその辺がよく分からないのだが」
私の問いかけにケスラー提督が笑った。
「メックリンガー提督も軍人だな、経済は分からん様だ。政治と言うのは理で動く、しかし経済と言うのは利で動く。誰も損はしたくない、そして黒姫と反乱軍はお互いの交易に利を見ている」
利か……。言っている事は分かるのだが今一つピンと来ない。
「どういう事かな」
「イゼルローン要塞陥落直後、最高評議会議長ヨブ・トリューニヒトは辞任している。責任を取ってと言っているがあれは逃亡だと思う。当時の反乱軍は三個艦隊しかない実戦部隊の内一個艦隊を内乱で磨り潰した。さらにアルテミスの首飾りを失ったところにイゼルローン要塞をうしなったのだ。国防に自信が持てなか
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