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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第九話 オーベルシュタイン
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良かろう。なお、嫌疑が晴れるまでの間、外部との接触は禁じる」

ちょっと間が有ったな。金髪は怒っているんだろうが確信は持てないんだろう。野郎は平然としているからな。俺だって迷うところだ。ああいうのは遣り辛いよな。衛兵が二人来て総参謀長を連れていく。これまた全然抵抗しないんだよな、普通なら抵抗とか無実を訴えるとかすると思うんだが何も感じていないように歩いてる。妙な野郎だ。

オーベルシュタイン総参謀長が連れ去られ式場から居なくなると金髪が親っさんに声をかけた。
「卿は本当にオーベルシュタインがスパイだと思うか。彼に対しては腹立たしい思いは有る、しかし今一つ私は確信が持てないでいるのだが……」

「私も分かりません。ただオーベルシュタイン総参謀長に疑わしい点が有るのは事実です。良くお調べになるべきだと思います。そうでなければ軍内に不安が広がるでしょう」
金髪が“そうだな”と頷いている。

「彼が無実の場合はその用い方に気を付けて頂きたいと思います」
「と言うと」
「彼を遠ざけろとは言いません、有能な人物です、お傍に置くのも宜しいでしょう。ただ彼の危険性を理解したうえで用いて欲しいのです」
「……危険性か」
金髪が眉を寄せている。分かってるのかな、こいつ。

「彼の提案する作戦は味方を、弱者を切り捨て犠牲にする作戦であることが多いと思うのです」
「……焦土作戦とヴェスターラントか……」
金髪が呟くと親っさんが頷いた。

「それがいかに危険かはブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯の末路を見れば明らかでしょう。閣下は既に帝国軍最高司令官の地位にあります。帝国人二百五十億の人間が閣下の一挙手一投足に注目しているのです。特に閣下の基盤は軍に有り、将兵の殆どが平民だという事を忘れないでください。その事を忘れればあっという間に閣下の覇権は崩れると思います」

「卿の言う通りだな。私はもう少しでブラウンシュバイク公、リッテンハイム侯と同じ運命を辿るところだったと言う訳か。彼らを愚かだなどと笑っていながら私自身の愚かさに気付かずにいた。恥じ入るばかりだ」
金髪が大きく頷いている。うん、こうして見ると金髪も中々だよな。自分の欠点を素直に認めて謝る、口で言うほど簡単な事じゃねえ。

それにしてもさっすが親っさんだぜ。帝国軍最高司令官に物を教えるなんてそうそう出来る事じゃねえ。周囲の連中も皆頷いている、感服したってところかな。普段海賊なんて蔑んでいるんだろうが、親っさんは帝文に合格してるんだぜ、お前らなんかよりずっと学が有るんだ。

話しも一段落した事だしそろそろ報酬の話に行きましょうよ、親っさん。俺もう待ちくたびれましたよ。最後の最後で大仕事をした事だし、金髪もたんまり弾んでくれるはず、楽しみ
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