第七話 キフォイザー星域の会戦(後編)
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たのですよ。私達が助けなければ一体誰が助けるのです。一人でも多く救うために今すぐ救助を始めるべきです」
『……』
皆黙っている。敵を殺すのか敵を助けるのか……。
「リッテンハイム侯はガルミッシュ要塞に戻るはずです。我々は今の戦いを録画してありますからそれを通信で流しましょう。自分達の指揮官の正体を知れば兵達は何のために戦うのか疑問に思うはずです。場合によっては降伏という事も有り得ます。攻撃は急ぐ必要は有りません」
親っさんの言葉に赤毛が頷いた。
『救難信号も出ています、黒姫の頭領の進言を受け入れましょう。ガルミッシュ要塞の攻略は急ぐ必要は有りません。救助を優先します』
髭ももう一人も赤毛の決めた事には反対しなかった。
通信が終わると俺達の艦隊も救助に参加したんだが親っさんはずっと無言だった。遣る瀬無かったのかもしれないな。
“出来る事は有りません、黙って見ていなさい”
あの時の親っさんは冷たい目をしていた。あれ、ワザとだな。何も出来ないから敢えて冷たい眼で俺達を黙らせたんだろう。親っさん、俺達が騒ぐのが辛かったんだ……。
キフォイザー星域の会戦は赤毛の完勝に終わった。リッテンハイム侯の率いる五万隻、その内一万五千隻が完全に破壊された。ガルミッシュ要塞に逃げ込んだのは約五千隻、その他に五千隻程が行方不明になっている。残り二万五千隻は捕獲されるか降伏した。
リッテンハイム侯はガルミッシュ要塞で捕虜になった。親っさんの言う通りだ、味方を殺して逃げた事で皆リッテンハイム侯に愛想を尽かしたらしい。おまけに侯は酒に逃避して酔い潰れていたそうだ。そんな姿を見たら馬鹿馬鹿しくて戦う気になれなかったのだろう。兵達は侯を捕虜にして降伏した。キフォイザー星域の会戦の二日後だった。
親っさんは赤毛から随分と感謝された、無駄に戦わずに済んだってね。でも親っさんはあまり嬉しそうじゃなかった。酷い戦いだったからな、なんとも後味の悪い戦いだったし嫌って言うほど自分達の無力さを思い知らされた戦いでもあった、親っさんは素直に喜べないんだと思う。俺だって喜べない。
親っさんの言う通りだよ。殺し合うのと殺し合うのを黙って見ているの、どっちが楽か……。俺には分からなかった。皆に訊いても分からないって言っている。これからも分からないんだろう、大体答えなんて有るのかどうか……。親っさんに訊けばいいのかもしれないが、何となく聞けずにいる。聞くのが怖いのかもしれないけどな。
この戦いの唯一の慰めはリッテンハイム侯が惨敗した事で辺境星域の覇権はローエングラム元帥の物になったって事だ。ブラウンシュバイク公も劣勢らしいし挽回は不可能だろう。親っさんが言ってたからな、まず間違いはねえ。赤毛は辺境星域の平定が終わったら金髪の所に行
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