暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第七話 キフォイザー星域の会戦(後編)
[3/6]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ないんだからな。役に立つような戦力じゃないし、参加しても戦死者が出るだけで何の意味もない。後方支援に専念するのが分相応だろう。輸送船を分捕る事も考えたがそれだとキルヒアイスの作戦そのものが崩れかねない。しかも海賊が私利のために作戦を台無しにしたと非難されるだろう……。

黙って見てるしかないな、そしてそこから最大の利益を得るように行動する。そうでもしなければやりきれない。でもな、それってオーベルシュタインと全く同じだ。義眼は積極的に、俺は嫌々、でも利用し利益を得ようとするのは同じ……。

あの男を嫌っていながら同じ事をする、皮肉だよな、いやあくどくなったのかな。奴が人間の屑なら俺も人間の屑だ。最近はそれを考えるとついつい笑ってしまうよ、そしてそんな俺を周囲は怖がっている。海賊らしくなったんだろう、良い事だよな、俺は海賊の頭領なのだから。

「親っさん、何が可笑しいんです。さっきからクスクス笑っていますけど」
キアが不思議そうな顔をしている。キアだけじゃない、皆だ。自分が屑で有る事に気付いたから、とは言えないな。しかし少しは格好付けたい気分ではある。さて、なんと答えるか……。

「……軍人と言うのは人を殺すのが仕事です。私は軍人を辞め海賊になった、人を殺さなくても良くなった……」
「良かったじゃありませんか」
キアが周囲を見回した。皆頷いている。

「そうですね、その代わりに人が殺し合うのを黙って見ている事になった。殺し合うのと殺し合いを黙って見ているの、どっちが楽だと思います? なかなか笑える想像でしょう」
俺が笑い声を上げると皆が引き攣った表情をした。笑えるよな。

「お、親っさん」
「始まりましたよ、キア」
皆がスクリーンを見た。ワーレンが、キルヒアイスが動き出す。速いな、キルヒアイスの巡航艦八百隻は弧を描いてリッテンハイム侯に近付くがそれでも速い。そしてワーレンが良いタイミングで攻撃をかけだした。リッテンハイム侯を迷わせるには十分だ。その一瞬の迷いが勝敗を、生死を別ける……。惨劇の始まりだ……。



帝国暦 488年 7月 20日   キフォイザー星域  巡航艦バッカニーア  カルステン・キア



「ス、スゲエ!」
「何だよ、あれ」
「信じられねえ!」
彼方此方で声が聞こえる、実際スゲエとしか言いようがねえ。なんかいきなり千隻ぐらいの艦隊が飛び出したと思ったらあっという間にリッテンハイム侯の艦隊の横っ腹を食い破っちまった。

「親っさん、あれ」
話しかけると親っさんはチラッと俺を見た。嘘だろ、信じらんねえよ、興奮なんて欠片もねえ。
「リッテンハイム侯は一瞬ですけどあの小部隊を相手にするか正面からくる部隊を相手にするか迷った。それがあの結果です。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ