第五話 可能性を探る
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。彼らが信じたのはローエングラム侯じゃない、親っさんですよ」
そうなんだな、その信頼が重いんだ。それで困っている。アンシュッツには話しておこう。もしかするとそれで何かが見えてくるという事も有るだろう。
「……内乱が起きればまず百パーセントローエングラム侯が勝つでしょうね。どういう勝ち方になるかは分かりませんが彼が帝国の覇権を握る事は間違いない」
「……」
「彼を相手に中立などは有り得ない、中途半端は返って危険です。となれば積極的に味方するしかない」
「なるほど」
アンシュッツがフムフムと言った感じで頷いた。
「問題は彼が勝利を収めた後に起きると思っています。ローエングラム侯は政治を刷新するはずです。その中で辺境にどのように接してくるか……。辺境が貧しいままなら問題は無かった、仮に有っても小さかったと思います。政府も辺境にそれほど関心を示さなかったでしょうし辺境も政府に対し過度な関心など持たなかったはずです」
「そうでしょうな。我々が来るまで辺境は貧しかった。ずっと放置されてきたのだと思いますよ」
「そうですね。しかし徐々にそれが変わりつつある。辺境は豊かになりつつあるんです。政府はそんな辺境をどう思うか……」
「……」
俺が溜息を吐くとアンシュッツも溜息を吐いた。男二人、何やってんだか……。
門閥貴族が没落すればその財産を没収し国家財政を健全なものにする事は可能だろう。だがそれは一時的なものだ。恒常的なものにするのはしっかりとした財源が必要だ。門閥貴族の私有地、これは当然だろう。そして徐々に豊かさを示し始めた辺境……。財務官僚どもが食指を動かすのは目に見えている。
「辺境の住民は豊かになったのは自分達の努力と我々の協力によるものだと思っています。少なくとも政府になど何の恩義もないと思っている。いやむしろ無視されてきたという恨みを持っている。そして困った事は副頭領が言ったように辺境の住民は多少の濃淡はあれローエングラム侯に不信を抱いている……」
「……政府は辺境を搾ろうとし辺境はそれに反発する、ですか」
「政府がごく当然と思う税に対しても不当と思うかもしれない……」
男二人の声は益々小さくなった。大貴族から搾取を受けていた土地は良い。多少の新税を取られてもトータルで見れば税は軽減されるだろう。しかし搾取されなかった土地はどうだろうか、大袈裟だが統治者に対して不信感が有れば苛政と受け取られかねない……。
「なるほど、それでさっきの二人ですか」
「ええ」
「しかし、そうなると辺境と政府の間で軋轢が起きますな」
そう眉を寄せて難しい顔をするなよ、気が滅入るだろう。
「その可能性は有りますね。だからオーディンに事務所を置きたいんです。政府の考えを逸早
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