第五話 可能性を探る
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改革案を作成する事になる。その時、当然だが今日の話を思い出す筈だ。そうなれば辺境の現実に留意した政策案を作るだろう。何と言っても声をかけたのはこっちが先なのだ。この二人からすれば自分達を評価したのは俺の方が先だとなる。不遇な奴にとってはこのどちらが先に声をかけたかってのは結構大きいからな。それに顔繋ぎの意味もある。
二人が立去った後、アンシュッツを呼んで隣に座らせた。彼は恐縮しているがその方が周囲に聞えずに済む。
「なんでしょう、親っさん」
小声で問いかけてきた。分かってるじゃないか、そう、これは内密の話しだ。
「オーディンに事務所を開こうと思うのです」
「……拠点を作る、という事ですか、しかしそれは……」
アンシュッツが口籠った、眉を寄せている。彼が何を考えたかは分かる。オーディンは帝都だ、そこに事務所を開けば色々と憶測を呼びかねない、そう考えているのだろう。ちなみにオーディンは何処の組織の支配下にも無い。帝都という事で内務省が煩いのだ。どの組織もそれを嫌がり避けている。精々大きな組織が事務所を開くくらいだ。そこに事務所を開く……、アンシュッツも悩むよな。
「拙いと思いますか」
アンシュッツが首を横に振った。
「いや、ウチ程の組織ともなればオーディンに拠点が有ってもおかしくは有りません。むしろ今まで無かった事がおかしいくらいです。しかし……」
また口籠った。言い辛そうだな、促してやるか。
「しかし?」
アンシュッツがチラっと俺を見た。困った様な表情だが目が笑っている。
「昨年ウチは荒稼ぎし過ぎましたから……」
「そうですね、ちょっと遣り過ぎましたか……」
「まあ……」
二人で苦笑した。確かに今オーディンに事務所を開けば多くの組織が警戒するだろう。内務省、軍、フェザーン、貴族、海賊……。特に厄介なのは内務省と軍だろう。ラインハルトが、そしてオーベルシュタインが妙に意識しかねないという懸念は有る。
「親っさん、何を考えているんです」
「……」
「親っさんはつまらない見栄や面子で事務所を開く様な御人じゃありません。内乱だけを睨んでの事じゃないだろうとは思いますが……」
うーん、そんな覗き込むなよ。俺だってはっきりしたものは見えて無いんだ。いや見えてくるものは有るんだが形にはならない、酷く漠然としている。ただ放置すれば危険だろう。どうすればよいか……。
「親っさん、辺境じゃあ貴族、平民の区別なくかなりの人間がローエングラム侯に不信を抱いています。もう少しで飢餓地獄に落とされるところだったんですからね、無理もありませんや。かといってブラウンシュバイク公を筆頭とする門閥貴族も信じちゃいない。中立を守ろうとした彼らをローエングラム侯支持に纏めたのは親っさんです
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