第五話 可能性を探る
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、力無しに改革など不可能。それをこの二人は理解していない。
「そしてその軍人の殆どは平民と下級貴族出身です。つまり門閥貴族が力を失えば平民と下級貴族出身者が力を振るう事になる」
ようやく反応を示した。俺の方をじっと見ている。
「軍と言うのは指揮官だけでは戦えないのですよ。兵達が居て初めて戦える。彼らの力によって内乱を勝った場合、当然ですが兵達は見返りを要求する。自分達の出身階級への待遇改善をね。或いは指揮官が勝利の見返りを表明する事で兵の士気を上げる事も有る」
「なるほど、そうでしょうな」
ブラッケがようやく声を出した。これで話になるな。
「問題は辺境です。辺境では多くの貴族達がローエングラム侯が勝利するだろうと考えています。そして侯に味方する事を決定した。この場合辺境では貴族の権利を守りつつ平民の権利を拡大するという難しい状況が発生します。……ここまで間違っていますか?」
「いや、間違ってはいないでしょうな」
「確かに」
ブラッケ、リヒターが俺の考えに同意した。よしよし、良い感じになってきた。大体この二人はこれまで報われていない。この手の話に飢えているはずなのだ。
「貴族の権利を縮小すると言う考えも有ります。しかし辺境は比較的貧しいため貴族による搾取が難しかった。中央のような大貴族による搾取は出来なかったのです。どちらかと言えば貴族、いや地方領主の指導の下、領内を開発してきたと言う現実が有る。これを無視しては辺境は混乱してしまう」
「確かにそれは有るかもしれません。元々ルドルフ大帝が貴族による土地所有を許したのは比較的未開発の土地を強力な指導力を持つ人間を配する事によって開発させようとした狙いがあったのではないかと私は見ています」
リヒターが答えた。ようやく会話になったぜ。
「どうすれば共存が可能か、より効果的に辺境の開発を続けて行けるか、お二人で考えていただけませんか。中央政府との関係、行政、司法、税の徴収も含めてです」
俺の言葉に二人が顔を見合わせた。表情に困惑が有る、怯えでは無い、困惑だ。
「何故それを我々に?」
「いずれ新たな政府が発足した時、無茶な政策を発表するかもしれません。それに対して理論武装しておこうと思うのです。我々の政策の方が政府の政策より優れている、こちらを受け入れて欲しいと……」
「なるほど、面白いですな。そうじゃないか、ブラッケ」
「ああ、確かに面白い」
「では、お引き受けいただけますか」
俺の問いかけに二人は顔を見合わせて確認した後、承諾した。報酬は一人十万帝国マルク、前払い。向こうは辞退しようとしたが、辺境の未来がかかった仕事だから報酬を払うのは当然だと説得した。
まあこの二人はもうすぐラインハルトに呼ばれて
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