第一話 黒姫
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対する訴えも無くなった。鉱山は俺のものとなり安定した利益を出している。鉱山の警備はワーグナー一家に頼んだ。
ウチは辺境がホームだからな、自分の所から警備を出すよりその方が安く上がるし鉱山を襲えばウチとワーグナー一家の両方を敵に回す事になる、安全面でも効果が大きい。ワーグナー一家の頭領(かしら)、アドルフ・ワーグナーからは随分と感謝された。組織の損失は軽減されたし新しい仕事も入っている。
“黒姫の頭領(かしら)はなかなかの御仁だ” ワーグナーの俺に対する評価だ。ワーグナーの見解によると俺はハンスを上手く騙して鉱山の権利を自分の物にし、不要になったハンスを他の人間を唆して始末した冷酷非情な大悪党らしい。凄い事に俺は政府に働きかけてコルプト子爵家を断絶に追い込んだ張本人なのだそうだ。
酷い誤解だよな、でも業界の連中は皆がそれを信じている。俺の部下だって信じている節が有る。副頭領のアンシュッツは俺に真顔で“親っさん、俺達の知らない所で手を打たれたんですか”なんて聞いてくる始末だ。馬鹿らしくて無言でいたら“そうですか、聞いちゃいけない事なんですね”なんて言いやがる。訳が分からん。
帝国政府内務省の発表によると黒姫一家は広域指定海賊集団に指定されている。広域指定海賊集団の定義なんだが以下の通りだ。
以下の三項目のいずれかに該当し複数の星域にわたって活動をしている海賊組織を広域指定海賊集団と呼ぶ。
・海賊がその海賊の威力を利用して生計の維持、財産の形成または事業の遂行のための資金かせぎを行いやすくしている団体であること
・海賊の幹部または所属構成員のうちに、略奪、殺人等海賊特有の犯罪の前科を有するものが一定の割合以上居ること
・その海賊組織を代表する者またはその運営を支配する地位にある者の統制の下に階層的に構成されている団体であること。
なんか何処かで見た事が有る様な文言だよな、人間の考える事なんて変わらないってことだろう。しかしウチが該当するのは最後の項目だけだ、ついでに言えばどんな企業だって階層的に構成されている。それでもウチは広域指定海賊集団なんだそうだ。まあちょっと遣り方がえげつないところが有ったから仕方ないのかもしれない……。
フェザーンの格付け会社によるとウチの一家は帝国でも九番目に大きい海賊組織らしい。所有艦艇は武装艦五百隻、輸送船三百隻。武装艦は巡航艦、駆逐艦、軽空母が戦力の中核だ。黒姫一家に対する評価は知的武闘派、出来るだけ犯罪は避け合法的に利益追求を目指す、となっている。特質は貴族の生死、没落に極めて敏感でそれを利用した経済活動に非常に熱心な事。フェザーンの商人達の間では“黒姫が動く時は貴族が死ぬ、黒姫は死の使い”と言われているそうだ。否定はしない、その通りだ……。
そろそろカ
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