第一話 黒姫
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からずにいる。幾つかの偶然が無ければ何処かで野たれ死んでいたはずだ……。
帝国歴四百八十二年、中尉に進級したばかりの事だった。兵站統括部から自宅に帰る途中、暴漢に襲われて殺されかかった。襲ってきたのは財務尚書カストロプ公の部下だった。俺の両親を殺したのもカストロプ公だと言っていたな。多分、何処かの貴族の相続問題にでも絡んだのだろう。深夜まで残業したため帰り道は人通りが無かった。本来ならそこで死んでいたはずだ……。
俺が助かったのはたまたまそこを通りかかった老人のお蔭だった。何で俺まで殺そうとするのかは分からんがカストロプ公が絡んでいるとなればオーディンに居るのは危ない。助けられた俺は老人の持ち船に乗ってオーディンを離れた。その老人が先代の頭領(かしら)だった。頭領(かしら)は親切に俺の退役届けとかを全部処理してくれた。
間抜けな話だが俺は命の恩人が海賊だとは欠片も思わなかった。退役届けをスムーズに処理してくれたから昔は軍人で今は何処かの企業のお偉いさんかと思っていた。周囲に居る連中も全然海賊らしくなかったからな。老人が海賊、しかも頭領(かしら)だと知った時には心底吃驚したよ。何回も聞き直したほどだ、先代はその度に笑い声を上げたっけ。後でそのネタで何度も先代にからかわれた。
俺が先代を海賊だとは思わなかったのは俺が海賊と言うものを理解していなかったからだ。海賊と言うと船団や惑星を襲撃し略奪する犯罪者、ならず者だと思っていたんだが必ずしもそうではない。いや、そういう連中もいるのだが企業や貴族の依頼を受け船団の護衛や惑星の警護、物資の輸送に当たる海賊も居る。
つまり暴力団も居れば警備会社、運送会社も居るわけだ、全部兼業している連中もいる。それらすべてをひっくるめて私設の武装集団を帝国政府は海賊と言っているわけだ。まあ当然ではある、帝国はそんな武装集団の存在を認めていないからな。海賊としか言いようがない。先代は警備専門だった。
「君達の組織も随分と大きくなったな」
「言われてみれば、そうですね」
お互いしみじみとした口調になった。何か急に年を取ったような気分だ。この爺さん、時々俺を優しそうな目で見るんだよな。俺を息子のように思っているのかもしれない。
「君が頭領(かしら)になってから四年か、大したものだ」
「……あっという間でした、気がつけば四年が経っていましたよ」
子爵が頷いている。この爺さんには随分と世話になった。いや、クラインゲルト子爵領も随分と繁栄している。お互い様かな……。子爵と話した後はフィーアに会いカールと遊んでから屋敷を辞去した。最近はカールと遊ぶのが癒しになっている。皆、俺を怖がるんだ……。
俺が組織に入った時、その当時のバウアー一家(先代の名前がリヒャルト・バウアーだ
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