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銀河英雄伝説〜その海賊は銀河を駆け抜ける
第一話 黒姫
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姫一家の上を行く組織は足の指を使うまでもねえ、両手だけで数えられるんだ。親っさんがでかくしたんだ、分かってるのか、お前ら!」

「分かってますよ、副頭領。昔に比べれば給料だって上がったし、待遇だって良くなりました。親っさんには感謝してます」
「だったら親っさんの居ねえところで陰口を叩くんじゃねえ。意見が有るなら直接言え、親っさんはそんな事で怒ったりはしねえからな。なかなかそんな人は居ねえんだ、よっく肝に銘じとけ」
「はい」

アンシュッツ副頭領は頷くと“仕事に戻れ”と言った。失敗だったよな、ちょっと口が滑った。副頭領の前で“あれさえなければ”は余計だった。皆が俺の方を責めるような眼で見ている。巻き添えを食ったと思っているんだろう。悪かったって目で謝ったけど後で責められるな……。

「定時連絡の時間が過ぎているな、キア。ユーハイム、ニーマイヤーの船団から連絡は有ったか」
「ユーハイム船団長からは異常なしの連絡が入っていますがニーマイヤー船団長からはまだ有りません」
俺の答えにアンシュッツ副頭領は眉を吊り上げた。

「あの野郎、どういうつもりだ。船団長の癖に定時連絡一つまともに寄越さねえとは……。親っさんがブチ切れたらどうなるのか、分からねえとでも言うつもりか? 笑いながらブラックホールに叩っ込まれるぞ! キア、あの馬鹿野郎を呼び出せ、黒姫の頭領(かしら)が笑い出す前に俺が野郎の尻を蹴飛ばしてやる!」

あー、やばいよ、これ。尻を蹴飛ばすってアンシュッツ副頭領が切れた時の台詞だ。ニーマイヤー船団長、あの人しっかりしてるようでどっか抜けてるんだよな。副頭領にボロクソに言われるぞ。でも副頭領の言う通り、親っさんが切れるよりはましだけど……。それから三十分、アンシュッツ副頭領の怒鳴り声とひたすら謝るニーマイヤー船団長の声が巡航艦バッカニーアの艦橋に響いた。



帝国暦 487年 3月19日    クラインゲルト子爵領   エーリッヒ・ヴァレンシュタイン



「久しぶりだな、黒姫の頭領(かしら)」
「その黒姫の頭領(かしら)と言うのは止めて貰えませんか、クラインゲルト子爵」
俺の溜息交じりの抗議に子爵が楽しそうに笑い声を上げた。不本意だよな、黒姫って。年とったら黒婆か?

「失礼、久しぶりだな、ヘル・ヴァレンシュタイン」
「本当にそうですね、クラインゲルト子爵」
「どうかね、景気は」
「まあまあです」
「それは何よりだ、我々もまあまあだよ」

クラインゲルト子爵が愉快そうに笑う、俺も声を上げて笑った。変だよな、海賊が辺境の貴族の屋敷に招かれお茶を飲みながら楽しそうに笑っている。俺だって自分の事じゃなければ信じられなかっただろう。いや、今だって何でこうなったのかよく分
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