悲しい現実
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の内、腐蝕液を放とうとしている二体のネペントを前に俺達は駆け出し、ほぼ同時に二体を撃破した。
そして僅か十数秒で残り五体を仕留めて、やっと戦闘を終えることができた。
コペルが消滅した場所には、彼が使っていたスモールソードとバックラーが転がっていた。消耗具合は俺達と似たり寄ったりだ。
少し考えていたキリトは剣を拾い上げると周囲の木々の中で最も大きな樹木の根元に突き刺し、そしてその剣の根元にさっきの《花つき》が落とした《胚珠》を置いた。
「お前のだ、コペル」
そう呟いてからキリトは屈んでいた身体を起こし踵を返す。俺はその墓標を少し見てから、キリトの背を黙って追った。
三人がかりの乱獲によってこのエリアのモンスターは枯渇し、俺達はモンスターにエンカウントすることも無くホルンカに帰り着いた。村の広場に数名のプレイヤー、恐らく《元βテスター》の姿があった。今は誰とも話したくない俺達は気づかれないように依頼主のいる家へと向かった。
とりあえず、先にクエストを受注しているキリトが報告するためにノックして家に入っていった。俺はただ玄関扉で凭れ掛かってキリトを待っていたんだが、時間が経過したが一向にキリトが出てくる雰囲気は無い。
「……遅いな」
不思議に思った俺は家に入ってみる。すると奥の部屋でキリトの身体は大きくよろけ、ベッドに両手を置くとそのまま床に膝を着いていた。思わず俺はキリトに駆け寄る。
「どうした、キリト!!」
そう問うがキリトはただ嗚咽を漏らし、全身を震わせ続けるだけだった。
「………どうしたの、お兄ちゃん?」
ベットの少女はそう呟き、小さな掌はキリトの頭に触れた。それから、キリトが泣き止むまで、何度も何度も撫で続けていた。
「……落ち着いたか?」
「あぁ……えっと、その……」
「心配しなくてもお前が泣いた理由を聞くなんて無粋なマネしないからよ」
「……わるい」
「いいさ。人間だから喜怒哀楽があるんだ」
依頼主の家を出た後、俺達は家の裏にある野原にいた。キリトは暗い表情のまま、体育座りで俯いている。俺はその横に座って上を見上げていた。
「……会いたいな、家族に」
これは俺の憶測だがキリトが急に泣いたのはあの少女が妹か弟に重なって見えて、それで今まで本能的に抑えていた気持ちが溢れてきたのだろうと思う。
「あぁ……会いたい…今すぐ……会いたいよ」
「…ああ」
擦れ声で言うキリトの言葉に俺もしっかりと相槌をする。こんな死と隣合わせのところ、しかも会いたい人に会えないのは辛すぎる。かくいう俺もキリトの前ではなかったら、その重さに耐
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