悲しい現実
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後方程多くは無い。それでも、ここにはまだ大量のリトルネペントが来るのは確定だ。
「……ジン」
「ああ……背中ぐらい守ってやるよ」
「……助かる」
俺とキリトは、互いに背中を預けるようにして手にしているスモールソードを握りなおす。今までの戦闘で剣の耐久度は俺もキリトもかなり消耗して、そこらかしこ刃こぼれしている。下手に使えばすぐにぽっきり逝ってしまう。
その時は投擲用のダガーで戦うしかないが本数もすでに十本ぐらいまで減っていて心もとない。
故に、確実に弱点である茎部分を切り裂いて一撃必殺で倒さなければならない訳だ。横からはモンスターの咆哮と攻撃音がして、そしてコペルの叫び声が聞こえてくる。
だが、俺はそちらを見る余裕などどこにもない。迫るネペントの大群に対して、意識を集中して一気に地面を蹴った。
それから数分間の記憶はかなり曖昧になっていた。ただ、眼前のネペントの茎一点を斬り、ネペントの攻撃モーションが目に入ればその攻撃をかわしていた、ということしか思い出せなかった。
だが、死角からの攻撃には完全にはかわしきれず、そのたびに俺のHPバーが削られ、《死》が近づいてくる。
そして、生と死の狭間に立って初めて《現実》を感じることが出来た。
だからこそ、死にたくないという気持ちが胸の中から一気に湧き上がり、それが原動力となって体を動かす。
「破っ!!」
今までに無い気合を込めた掛け声と共に《ホリゾンタル》でネペントの茎を切り裂く。そして、短い技後硬直から解放されてすぐに迫ってくるネペントにダガーを投げて、怯ませた隙に近づいて《ホリゾンタル》で茎を両断する。
そんな時、突然、カシャアァァン!というひときわ鋭いポリゴンの爆発音が響いた。モンスターの破砕音とは違う音に誰がこの場から消えたかはすぐに分かった。
「…………」
爆発音がしたほうに視線を向けると藪の中からは七体のネペントが現れる。そこにはコペルの姿は無かった。
「………お疲れ様……。」
俺の隣に来たキリトは、ネトゲで《ログアウト》する時の定番の挨拶をコペルに告げてからぼろぼろの剣を構える。俺も同じくらいぼろぼろとなった剣を構え、正面を見る。
新たな獲物を見つけ、突進してくるネペント七体の先頭にいたのは捕食器の上にはマッカな《花》を咲かせていた。
二体目の《花つき》……俺達を《MPK》せずとも共に地道に乱獲を続けていたらきっと、コペルも《胚珠》を手に入れていただろう。だが、今更そんなこと思っても後の祭り。コペルが取った行動は彼自身が自ら決めたことだからだ。
HPは二人とも少ない。もう少しで危険域の赤に変わりそうだがもはやここで死ぬ気はしなかった。七体
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