悲しい現実
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……」
不意に呟いたのはキリトだ。
キリトの言うとおりだ。周囲を見渡せばありとあらゆる方向からリトルネペントが徐々に徐々に迫っている。この包囲網を抜けるのはまず無理だ。視線は自然と密生した木々の中を駆けるコペルの背中に行っていた。
そして、アバターの姿は見えなくなり、ただカラー・カーソルだけは表示されたままだった。
が――、そのカーソルは忽然と消えた。
「なっ…消えただと!?」
眼に見えている現象に俺は思わず声を上げていた。
「《隠蔽(ハイデイング)》スキルの特殊効果だ」
「特殊効果……?」
冷静に俺の疑問に答えてくれるキリト。聞き返すと、キリトは頷いてから言葉を続ける。
「その名のとおり、プレイヤーからはカーソルを消し、モンスターからはターゲットにされない効果だ。
コペルは二つ目のスキルスロットを空けてたんじゃなく、俺達に会う前に最初から隠蔽スキルを取得していたんだ。だから最初の会った時に、背後から来たコペルを気づく事が出来なかったんだ」
「なるほど……コペルは最初から俺達を《MPK》するつもりで接触してきたってことなのか……」
「……そうだろうな」
《モンスター・プレイヤー・キル》通称《MPK》。古典的なプレイヤーキルのひとつだ。俺もその手のことは他のゲームでやったことはあるので、あらかたは判るつもりだ。
そうと分かれば、俺にでも動機も分かる。それはキリトが持つ《ネペントの胚珠》を奪うためだ。
俺が持っている《胚珠》はアイテム欄に納めているが、キリトが持つ《胚珠》はポーチの中に入れているため、もし死ねばその場でドロップする。コペルはネペントの大群が去った後にそれを拾って村に戻り、クエストを無事完了、というわけか。
「………そうか……」
もはや視認でも分かるぐらいまで迫ってくるネペントの大群に対し、隣に立つキリトは静かに佇んで小さく呟いた。
「コペル……知らないんだな」
それからキリトはまるで語り掛けるような口調で話しだした。
「多分、《隠蔽(ハイデイング)》スキルを取るのは初めてなんだろう。あれは便利なスキルだ。でも、残念ながら万能じゃないんだ。あれは視覚以外の感覚を持っているモンスターには、本当に効果が薄いんだよ……たとえば、リトルネベントみたいなやつとか」
「ッ……!?」
キリトの言葉に偽りは無かった。ネペントの大群の一部は明らかにコペルが身を潜めていた藪を目指している。今頃、コペルは姿を隠しているのにターゲットされているのに驚いている頃だろう。
そして、無言のままキリトは後方へと振り返った。前方のリトルネペントの大半はコペルの方へと流れていくから、
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