悲しい現実
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で
「あ、ああ…ちょっと色々と考えていたんだ」
と声を漏らした。
流石にダンジョン内なので、気を引き締めないと最悪死ぬ。
そう思いキリトにちょっときつめに、
「考え事って、さっきのはさすがに危なかったぞ」
と注意する。
あっちもそのことは十分理解しているから素直に「悪い。」とだけ返した。
かくいう俺もそんな人のことをいえる立場じゃないので、
「いいさ。俺も人のこと言えないからな」
と返す。
その時、俺とキリトの背後で再びポリゴンの破砕音が響く。振り返るとコペルがネペントを屠ると、ふぅっと息を吐きながらこちらに振り向く。そして、
「出ないね・・・・・・・。」と呟く。
コペルの声にはやはり疲労の滲んでいる。三人で乱獲を始めてもうすでに一時間はたっていると思う。
倒したネペントの数は、三人合計したら優に百五十は超えるだろうが一向に《花つき》は姿を現さない。加えて、俺も含むがかなり精神的にかなり疲労が来ている。武器の耐久力も関係あるし、そろそろ引き際だろうか。
「だな…このままだとこっちがジリ貧になる可能生が十分にある。」
とキリトも同意する。
幸いにも他に人が来る気配もないし、時間ももう夜だから多分他の人が来るのは早くて明日だろう。
それまでに装備などを整えて、朝早くにきたら狩場は大丈夫だろう。
キリトは少し考えた後、
「もしかしたら、βの時の出現率が多少変更されているのかもしれないな。」
と呟いた。
成る程、それはおおいにありえる話だ。この手のネトゲは、レアのドロップレートとかは正式サービスで下方修正されることが多い。他のMMOでも聞いたことはいくつかある。
それに納得していると、キリトが多少笑いながら
「……それか、ジンの尽きた運がここで影響しているかもな」
といってこっちを見た。
こちらも笑い、それをいうなと軽口を叩きながらも、俺は提案した。
「しかし、どうする?皆のレベルも上がったし、武器もかなり消耗していると思う。ここいらで引き上げるのも―――」
と、俺が言い掛けた瞬間、俺達から数十メートル程離れた木の下に一つ集束し始める赤い光。
四角形のポリゴンブロックが幾つも生まれ、それ等が組み合わせって大まかな形を作り上げる。それは見慣れた光景の一つ――モンスターの|湧出(ポップ)だ。
「「「…………」」」
俺たちはその場に立ち尽くし、ただ黙ってその光景を眺め続けた。
『どうせまたノーマルネペントだろう』と頭の中で思っていると、ネペントは数秒でその姿を形成して、ツルをうねうねさせながら歩き始める。生物めいた光沢のある茎、マダラ模様のある捕食器、その上に――見覚えのあるチューリップに似た巨大な赤い《花》。
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