序章:『始まりの物語』
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僕は静かにドアを開けて中に入り、ベッドに視線を向けて
固まった
そこにいたのは人形
魂が入っていない脱け殻
目は虚ろで虚空を見上げている
壊れている
何故受付の女性が化物を見たかのような表情をしていたのかが分かった
確かにこんな子を見たらそうなってしまうだろう
「僕が………僕がテロを事前に止める事が出来なかったから」
僕は手を強く握りこむ
爪が掌の肉に食い込むが構わない
これは僕のせいだ
僕がもっと早くに陽動だと気付いていたら
「すまない」
すまない
「僕のせいだ」
すまない僕のせいだ
「すまない」
すまない
私は目を覚ました
前世の自分と、本来の持ち主の自分が1つになったからか、自身に対する第一印象が変わった
元の私に前世の男意識が混ざったような存在
人の気配がして目を覚ました私は、病室のドアの前で顔を歪ませる男性が写った
高町士郎?どうしてここに
「あ………」
喋ろうとするが声がつっかえる
私が喋ろうとしているのに気付いたのか、士郎さんは私のベッドに近付いてくる
「あな………たわ………?」
絞り出せた言葉
初対面な筈なのに名前を知っていたら可笑しいので名前を聞いてみる
「僕かい?僕は“高町 士郎”君に命を救われた者だよ」
「しろ………う?」
「そうだよ。君は“鬼柳 輪廻”ちゃんでいいかな?」
「た………ぶん」
実は違ったりしたら困るからね
まぁ記憶も同化−融合−しているのでその心配はないのだけど一応の確認
「そうか………すまない輪廻ちゃん。僕がテロを止められなかったばかりに君と、君のご両親を………」
泣いている
泣いてくれている
パパやママが死んだのは士郎さんのせいじゃないのに
「しろ………うの………せいじゃ………ない」
途切れ途切れの言葉
だが、この言葉が救いだったのか士郎さんは嬉しそうに、けど申し訳ない表情で私を抱き締めてくれた
「どうし………て………抱き締………めて………いるの………?」
「嬉しいからだよ」
「どう……して嬉しい……のに泣い……ているの………?」
「助けて………護れなかったからだよ」
士郎は優しいな
パパやママが死んじゃったのはテロリストのせいなのに
だから
「しろ………う」
だからね士郎
「けが……なく……て……よか……た」
「けが……なく……て……よか………た」
「っ!?」
俺は輪廻ちゃんのこの言葉に、この顔に声が詰まった
ひきつりながらも
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