無印編
第十三話 裏 (士郎、なのは、すずか)
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いなのはは、思わず強く叫んでしまう。
強く先ほどの情景を意識してしまったなのはが縋るべき言葉は、もはや昨日の翔太の言葉しかなかった。
「ずっと一緒にいるって言ってくれたのに……」
そうだ。翔太は言ってくれた。ずっと一緒にいてくれる、と。あの翔太が嘘をつくはずがない。
―――ならば、なぜ? なぜ、翔太はなのは以外の人の隣で笑っていた? しかも、なのはが見たこともないような笑顔で。
なのはの頭がその答えを見つけるためにフル回転する。そして、しばらくして、なのはは一つの答えにたどり着いた。
―――ああ、そうか。そうだったんだ。
なのはは理解した。ああ、そうだ、実に簡単なことだった。
昨日と今日の違い。それは、なのはが倒れたか倒れていないか、だ。
もしも、昨日、なのはが倒れなければ、今日も翔太はなのはと一緒にジュエルシードを捜索していただろう。だから、今日の情景が生まれたのは、なのはが倒れたからだ。
ならば、翔太と一緒にいるためには、倒れなければいい。そんな不甲斐ない自分にならなければいい。
そう、実に簡単だった。
「あはっ」
答えを得たなのはは笑った。
―――そうだ、だから、今日はショウくんは休みって言ったんだ。それを破って出てきたなのはが悪いんだよ。
自分の心を護るために、翔太がなのはの理想であるが故に、なのははそう自己完結した。
なのはの足は先ほどよりも軽くなって自宅を目指す。当然、帰宅してベッドで横になるためだ。翔太が休めと言ったのだから、休むしかない。
―――今日は、休んで、明日からはずっとショウくんとジュエルシードを探して、探して、探して、ジュエルシードを集めて、集めて、集めて、あつめて?
登山道の入り口付近でなのはは軽やかだった足を止めて、考える。だが、その思考は別の場所から、それ以上考えるな、と警告を送られるが、もはや手遅れだった。その思考は、なのはの中心部分で始まっていたのだから。
―――ジュエルシードを集めて、集めて、集めたら……どうなるの?
なのははあのフェレットの言葉を思い出す。
『ジュエルシードは全部で21個あります』
つまり、なのはが、ジュエルシードを集めて、集めて、集めて、集め終えたら……
がしっ、となのはは自分の膝が汚れるの構わず地面に膝をつく。さらに、春だというのにガタガタ身体を震わせ、カチカチと歯を鳴らし、寒さから自分を護るように自分の腕で身体を抱きしめていた。翔太が魔法を使ったときのようだが、今度は絶望の桁が違う。あの時は、翔太が魔法を使おうとも心のどこかで分かっていた。自分には遠く及ばないと。だが、今度は違う。明確な終わりが見えた。見えてしまったのだから。自分
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