無印編
第十三話 裏 (士郎、なのは、すずか)
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目の前の状況が受け入れられなくて、どうして、どうして、と疑問が浮かびながら、自分以外と笑いながら話している翔太なんて見たくないのに、なのはの足はその場に縫い付けられたように動くことはできなかった。その結果、なのはの眼は、翔太と翔太と共に笑いあう二人の女の子を見ているしかなかった。
翔太の様子は、なのはの隣にいるときよりも楽しそうで、なのはに見せている笑みよりも嬉しそうで、なのはが今まで一度も見たことがないような表情だった。
翔太の初めて見た表情にも愕然とするなのは。
混乱の極みにあるなのはは目の前の状況が理解できない、理解したくない。
―――自分以外の人が隣にいて、翔太が笑っている姿など。
だが、目の前の状況はリアルであり、なのはがいくら否定しようとも現実だ。
不意に、不意に翔太と話している金髪の女の子が翔太から視線を外して、なのはの方に顔を向け、彼女となのはの視線が合った。その瞬間、金髪の女の子は何かを理解したように笑った、嗤った、哂った。
その笑みが、あんたには、翔太を笑わせることなんてできないしょう、あんたなんてお払い箱よ、と言われているようで、翔太の隣になのはがいることを否定されたようだった。結果、それを契機にして、なのははガクガク震える足と手を懸命に動かしながら踵を返して、その場から逃げ出すしかなかった。
◇ ◇ ◇
息を切らして、肩で呼吸をしながら、なのはは当てもなく商店街を走る、走る、走る。途中、足がもつれて、ヘッドスライディングのように地面をすべり、ハイソックスが破れ、翔太に見てもらうために見繕った洋服が汚れてしまうが、それでもすぐに起き上がって、また走り出す。
とにかく、一秒でもあの場所にいたくなかった。自分が翔太の隣にいることを否定されたあの空間から、少しでも遠くに、一秒でも早く、逃げ出したかった。
「はぁ、はぁ、はぁ―――」
走りきった先に着いたのは、桜台の登山道だ。ここからは、海鳴の街が一望できた。
だが、そんなことは、今のなのはには関係なかった。先ほどの情景がなのはの脳裏にフラッシュバックする。
―――見たことない表情で笑う翔太。翔太と一緒にいる二人の女の子。そして、なのはを嗤った女の子。
「あ、あはは、嘘。嘘だよね」
あまりに衝撃的な状況になのはは否定することしかできない。だが、強く否定すればするほどに先ほどの情景は現実としてしか思えなくなってしまった。
強く否定するということは、その情景を強く意識するということだ。故になのはは、あのときの光景を否定したいにも関わらず、逆に強く意識してしまうほどに刻み込んでしまった。
「なんでっ!? どうしてっ!?」
否定したいのに、否定できな
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