無印編
第十三話 裏 (士郎、なのは、すずか)
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にせ、まだなのはは子供だ。だから、そこまで頭が回ったか分からない。だが、子供であるが故に親という立場からの許可は、なのはが行動する根拠には十分だったのだろう。
なのはは、恭也からの一言を聞いて、ベットから降りて身支度を始めた。せっかく翔太に会うのだから、身だしなみぐらいはしっかりしたいものである。
なのはが身支度を終えて、外に出たのは、恭也から声を掛けられて20分後のことだった。
◇ ◇ ◇
胸の鼓動が抑えられない。
会えないと思っていた休日に不意に出会えるようになった。ただ、それだけでなのはの胸の鼓動は高鳴る。
―――会ったら何を話そう。やっぱりケーキの話かな。
そんなことを考える自分に笑える。つい先週までは、もう何も期待しないと思っていたのに。翔太の前では、なのはも話すことができた。
それは、今まで話した誰かのように早くと急かすような様子もなく、なのはがきちんと話し終えるまで待ってくれるからである。
―――ジュエルシード発動してくれないかなぁ。
翔太に聞かれれば不謹慎なことをなのはは考える。
だが、なのはにとっては自然なことだった。そうすれば、翔太に会えた上に、ジュエルシードを封印したなのはは翔太に褒めてもらえるのだから。もし、そうなれば、今日という休日はなんと幸福な日になるのだろう。
そんなことを考えながら、駅前の商店街を少々早歩きで翠屋を目指すなのは。
やがて、翠屋が見えて、表のオープンテラスに見慣れた翔太の後姿が見えた。一年生の頃、憧れで見ることしかできなかった翔太の後姿はよく覚えている。彼の姿が見えた瞬間、なのははすぐにでも翔太に会いたくなって、早歩きだったのが、駆け寄るように足を速めて、豆粒程度だった翔太がはっきり見えるようになった頃、「ショウくん」と声を掛けようとして―――なのはは息を呑んだ。
その場にいたのは翔太だけではなかった。一緒にいるのは、白いカチューシャをした黒髪の女の子と綺麗な金髪の髪を靡かせた女の子。両者ともなのはの目から見ても可愛いと思えるほどの女の子だ。そんな女の子と翔太が、笑いながらテーブルを囲んでいた。そして、テーブルの上に並んでいたのは、ケーキが載っていたであろうお皿が三つ。
―――え、あ、あれ……?
それは、なのはと翔太が一緒に食べるはずのケーキではなかっただろうか。一緒に食べる姿を想像していたのに。翔太はすでにケーキを食べ終えていた。なのはの知らない女の子と一緒に。
―――ど、どうして?
なのはにはこの状況が理解できなかった。翔太に会えると思って翠屋まで来たというのに来てみれば、翔太は他の女の子と一緒になのはと食べるはずだったケーキを既に食べ終えている。
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