無印編
第十三話
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痛みがひどかった。正直、吹き飛ばなかったのが不思議なぐらいだ。
このときほど、僕は自分が二十歳の精神を持っていることを恨んだことはない。もしも、僕が身体と同等な小学生の精神を持っていれば、きっとケンジくんに殴りかかっていただろうから。だが、僕の二十歳の精神がこんな子供に殴りかかるな、と制止をかける。結果、僕は殴られても、その場に立ったままケンジくんを睨み返すしかなかった。
「んだよっ! お前はなんかむかつくんだよっ!!」
もう一度、振りかぶるケンジくん。だが、その拳が振り下ろされることはなかった。
「やめろよ。さすがに手を出したら、お前の負けだぞ」
先輩がケンジくんを羽交い絞めにしているからだ。いくら3年生の中で大柄なケンジくんとはいえ、5年生の先輩に適うはずもない。結果、拳は振り下ろされることなく、ケンジくんは先輩の羽交い絞めから逃れようと身をよじるだけだった。
「はなせよっ! あんたには関係ないだろっ!!」
「関係ないかもしれないが、殴られているのを見てるわけにもいかんだろ」
体力的な問題もあるのだろう。ケンジくんが先輩を振りほどくことはできなかった。やがて、僕が殴られるのを呆然と見ていた同級生たちが僕の周りに集まって「大丈夫?」と声を掛けてくれた。人を気遣う優しさはあるようだ。僕は、彼らに大丈夫、と返したのだが、頬が相変わらずまだ腫れたように熱い。
「あ、ショウ、血っ!」
「へ?」
ぐっ、と口元拭うと袖口に付着した赤黒い血のようなもの。おそらく、殴られたときに歯で切ったのかもしれない。もっとも、ダラダラ流れているわけではないので、舐めておけばそのうち止まるだろう。
「おい、ショウ。大丈夫か?」
「ええ、まあ、舐めとけば止まりますよ」
僕からしてみれば、信じられないことだが、先輩はケンジくんを抑えて尚、余裕があるらしい。血を流している僕のことを心配してくれるのだから。だが、さすがに血を流すところまで本気で殴ったケンジくんが許せなかったのだろう。今まで見たこともないような怒った顔をしていた。
「おい、お前、サッカーのことならサッカーでけりをつけろよな」
突然の先輩からの提案だった。
話を聞けば、僕の考えに賛同する面々とケンジくんの考えに賛同する面々での試合らしい。僕の場合は、低学年の子供たちも加えて良いらしい。ここに集まっている3年生は15人なので25人になってしまうが、まあ、やっているゲーム自体も最初からルールどおりじゃないから構わないだろう、とのことだ。
ケンジくんは自信満々にそれに賛同。僕も殴られるよりもよっぽどいいので賛同した。
結論から言うと、ゲームをするまでもなく僕の勝利が決まった。なぜなら、ケンジくんのチームに集まった
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