無印編
第十三話
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僕は、決意を固めるとグラウンドへと駆け出した。目標は、丁度ボールを持っているゴールキーパである。
「はい、ストップ」
「ショウくんっ!?」
ボールを蹴り出そうとしていたキーパの子の肩を掴んで、試合を止めた。肩をつかまれた子はどうやら、僕に気づいたようだ。
「まったく、何やってるの? 下級生を仲間はずれにして、自分たちだけやるんなんて、そんな格好悪いことやって」
「いや、それは……」
口ごもるクラスメイト。たぶん、それなりに罪悪感というものがあったのだろう。あるいは、僕に見つかってばつが悪いといったところだろうか。
「ほら、今からでもいいから、あの子たち誘ってあげなよ」
僕が指差した先には10人程度の下級生。諦めて帰っていなかったことから考えても、来てからあまり時間が経っていなかったのだろう。
だが、僕の提案に対して同級生たちの反応は芳しくない。サッカーのプレイ自体は止まっているが、互いに顔を見合わせて、どうする? と視線で語っているようだった。
「おい、なに勝手に来て、勝手なこと言ってるんだよ」
誰もお互いに顔を見合わせて動けない中、一人だけ僕に近づいてくる大柄な同級生がいた。名前は、確か……ケンジくんと言っただろうか。クラスは第二学級なので、サッカーに興じていた同級生という認識しかないのだが、どうやら、この状況を鑑みるに彼がこの状況の首謀者らしい。
「当たり前のことを言ってるだけだよ」
少なくとも一週間前までは、下級生が現れてもすぐに仲間に入れてサッカーに興じていたルールが存在していた。だが、今はそんなルールはなかったとばかりに下級生を無視している。
本来なら、このグラウンドは、誰でも使えるものであり、3年生が独占していいものでもない。
「うるせぇっ! ずっと来なかった奴が勝手言ってんじゃねえよっ!!」
さて、人の交渉において最後で最悪の手は、当然のことながら暴力だ。それは伝家の宝刀に近い。つまり、絶対に抜いてはいけないのだ。取り返しがつかないから。
しかしながら、子供時代において暴力を使ったいわゆる喧嘩は多い。なぜなら、交渉ができるほどに口が上手くないからだ。言い返すことができず、結果として、伝家の宝刀である暴力をふるってしまう。
この場合のケンジくんも同様だったのだろう。肩が大きく動くのが見え、直感的に殴られると分かった。もっとも、分かったところで僕が反応できるはずもなく、できることは歯を食いしばって踏ん張ることだけだ。
直後、頬に強い衝撃が走った。当然、殴られたのだ。僕よりも頭一つ分大きな相手から力任せに殴られたのだ。当然、かなり痛い。幼稚園の頃は、喧嘩もかなりあったが、最近はあまりなく、殴られるのも久しぶりだから余計に
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