無印編
第十三話
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――僕は、なぜか翠屋JFCに所属している先輩と一緒に聖祥大付属小のグラウンドへと向かっていた。
先輩と一緒になった理由は、アリサちゃんたちと別れた僕を見計らってきたからだ。
「それで、どうして、僕たちが話している間、来なかったんですか?」
聖祥大付属小へと向かうバスの中で僕は先輩に聞いた。
「なんでって、仲良さそうに話してたし、そもそも、あの子たち呼ぶように言ったの俺じゃねえし」
「え? そうだったんですか? でも、電話じゃ」
「俺の先輩だよ。六年生のな。俺には、女の子なんてよく分からないしな」
サッカーのほうが楽しいし、と呟く先輩。もっとも、小学生としてのあり方なら先輩のほうが正しいと思う。その先輩の先輩たちというのは、ちょうど異性が気になる年頃なのだろうか。まだそれを理解できないことにつき合わせられる先輩がある意味でかわいそうだった。
「………先輩も苦労してるんですね」
「まあな。それより、なんで休日に学校に行ってるんだよ?」
「昨日、先輩が言ってたことが気になりまして」
そう、昨日先輩が言ったことだ。2年生や1年生を仲間はずれにして、3年生だけでグラウンドを独り占めしている状況ができているこということ。もし、そのことが本当だとすれば、休日である今日も聖祥大付属小のグラウンドは、サッカーで使われ、3年生が独り占めしているはずだ。
だから、僕はそれを確認するために学校に行くのだが、その話を聞いた先輩もついてくると言い始めた。曰く、面白そうだから、らしい。ちなみに、ユーノくんは、すでに家に帰している。
さて、学校に到着した僕らが見たものは、サッカーボールを抱えて、グラウンドを独り占めし、サッカーに興じている3年生を見ている低学年の子供たちだった。
どうやら、先輩が言っていることは本当らしい。僕が来なくなる前までは一緒にサッカーに興じていたはずのクラスメイトまで、この状況が当然のようにサッカーで遊んでいる。
やれやれ、とこの場合は、誰一人としてこの状況をおかしいと言い出す人間がいないことを嘆くべきか、あるいは、前までのルールを改革してしまうほどのリーダーシップを発揮したクラスメイトを褒めるべきか、本気で悩んだ。
しかしながら、そんなことで悩んでいる時間はない。現に今でもどこでサッカーをしようと悩んでいる低学年の子供たちがいるのだから。
「さて、どうする? ショウ」
「そりゃ、もちろん、止めますよ」
ニヤニヤ笑いながら僕に問いかける先輩。どうやら、今回の件で彼が首を突っ込んでくるつもりはないらしい。まあ、それはそれで有り難い。ここはあくまでも3年生の問題なのだから。5年生の先輩が出てくれば収まるだろうが、それは決して解決にはならないだろう
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