無印編
第十二話
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て声をかけるが返事はなく、今一歩近づこうとしたところで、急に先ほどまで浮かべていた笑みを消して鬼気迫る表情で叫んだかと思うと、ふらっ、となのはちゃんの身体が崩れ落ちた。
「―――っ!」
間に合うかっ!? と思ったが、何とか僕の身体をなのはちゃんと床の間に滑り込ませることに成功した。
なのはちゃんが倒れてきた衝撃が、僕のお腹にそのままぶつかってきてかなり痛かったが、なのはちゃんがそのまま倒れて頭を打つと僕のこの衝撃よりもさらに大事になることを考えれば、大したことではない。
「なのはちゃん?」
僕のお腹に頭をうずめているなのはちゃんに声をかけるが、反応がまったくない。青白い顔をしたまま、目を瞑っている。
感覚的にこれは拙い、と感じるのにさほど時間は必要なかった。すぐに僕は、なのはちゃんを背後に回して背負い、立ち上がる。
漫画などでは、男の子が女の子を背負うと、女の子が「重くない?」と聞き、苦笑しながら軽いよ、と男の子が答えるシーンがありきたりだが、あれは二次性徴を超えた高校生ぐらいになればの話だ。二次性徴などまだ数年先である僕となのはちゃんの場合、ほぼ成長速度は同じ。いや、女の子のなのはちゃんのほうが早いぐらいだ。
そんなわけで、僕は自分を背負っているのと同じぐらいの重みを感じながら保健室へ向けて慎重に早足で歩いていた。
途中で奇異の視線を向けられるが、正直構っていられない。何より、ここで囃したてるような子供は、聖祥大付属小にはいないようだ。
「ショウ、どうした?」
「高町さんが倒れたんだ。第二学級の先生に伝えてくれる、と嬉しい」
偶然、学校に残っていた男の子の友人に話しかけられ、僕は自分がこれからやらなければならない、と考えていた中で、一番一人ではできないことをその友人に頼んだ。割とクラスの中でも気の良い彼は、分かった、と言うと職員室のほうへと走っていってしまった。
普通なら廊下は走らないように、と言うところだが、今はそんなことは言っていられない。
他にも話しかけてくる友人が数人いたが、彼らには保健の先生を捕まえること、僕らの担任にこのことを伝えることなどの仕事を任せて、僕は保健室へ一直線に向かった。
◇ ◇ ◇
僕は、目の前ですぅ、すぅと先ほどよりも若干血行のよくなったなのはちゃんの顔を見ていた。
あの後、職員室では結構な騒ぎになってしまったらしい。学校で生徒が倒れたとなれば、当然といえば当然なのかもしれないが。
結局、原因は寝不足による貧血ということが、定年退職間近に見えるおばあちゃんの養護教諭によって分かった。どうやら、この教諭、伊達に年を取っていないようで、脈と顔色を見ただけで、原因を探り当ててしまった。これが、養護教諭とし
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