第一物語・後半-日来独立編-
第十八章 無意味な会議《1》
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して住民に向かって言葉を発する。
日来を動かすのは自分ではない。自分はただ今後を提示するだけで、日来を動かすのはそれを見た住民達だ。
だから彼は前に立つ覇王会ではなく、住民へと疑問を投げ掛けるつもりで話す。
「独立行動を起こせば、ここに存在する皆全てに被害が及ぶ。戦う気の無い者達をお前達は争いへと導くのか?」
「だからそれは――」
他へと移住すればいい、と言おうとした口を飛豊は閉ざした。
これを続けていれば、こちらは住民のことをどうでもいいと勘違いを抱かれる可能性がある。
危なかった、とは思わない。そう言うように、彼方がそう仕掛けて来たのだ。
言ってしまったら彼方はそこを突いて来ただろう。そうなっていたら、こちらはかなり不利になっていただろう。
迂闊だった。自然と警戒を緩めていた。
自身の未熟を感じながらも、飛豊は息を飲み言葉を改めた。
「……いいや。戦いたくない者は私達が守ってみせる」
「お前達のような未熟者にか」
「ちょっと宜しくて?」
肘を曲げることで手を挙げ、金の瞳を社交院へとネフィアは言う。
前置きの無い、突如の言葉を投げた。
細身の体を社交院側に向けたまま、
「戦うのはわたくし達だけじゃありませんのよ?」
「どう言うことだ」
「軍事を主としている貴方達、社交院にも戦闘には参加してもらいますわ」
日来の独立には、外交と軍事を主とする社交院の協力が必要不可欠だ。
高等部から軍事に関わるが、正直学勢だけではさすがに他とはやり合うことは出来ない。
経験を積んでいる社交院がいなければ、日来は戦闘に入った場合はすぐさま沈むだろう。
それを聞き、口を動かしたのは葉木原ではなく鷹代だ。
血色の良い唇を動かし、
「社交院と共同で戦闘を行うと?」
「そうですわ。これは他でもやっていることですので自分達にも出来ますわ。それに普通は手の出せない学勢院と社交院ですが、学勢院は覇王会が、社交院は防衛のための戦闘ならばお互いに手を交えることが出来ますので」
「成程。しかし、攻め込むときはどうするのだ? 守ってばかりが独立ではないだろう、それとも攻め込まれるのをわざわざ待つのか?」
「それは場合によって違いますので、そのときの判断となりますわ」
「考えていないと取らることも出来るが、まあ、いいだろう」
会議が進んでいるが、未だ手応えが掴めていないことを飛豊は感じる。
まだ始まって数分と言ったところだろう。
しかし、早くしなければ宇天長の救出までの時間が短くなるだけだ。
多めに取れるなら取っておきたい、そんな焦りから心地の悪い汗が額から頬へと落ちた。
会議はまだ始まったばかりだ。
気を落ち着かせるため、一つ。大きく息を吸い込み、それを腹の奥から吐いた。
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