壱ノ巻
文の山
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かあきら)と父上と兄上でお腹いっぱい。もう耳タコ」
「その高彬に今日は姫を送らせます」
「え?いいわよ別に」
「姫」
「…わかったわよ。気をつければいいんでしょ、気をつければ」
「本当にわかっていてくださるのならよろしいのですが…。高彬」
「は」
板戸の向こうから、声がした。
いつの間にいたのか。
「姫を送ってさし上げろ」
「は」
「若殿も言われていたけれど、本当にもう危ないことはしないでくれよ。僕があの時偶然いたからよかったけれど、そうでなければ…考えたくもないよ」
「わかってるって!悪いと思ってるし感謝もしてる。何度も聞かされたわよ、それ!」
あたしは耳を押さえていった。
高彬のほうを向いて話していたから、どん、と人にぶつかった。
「あ、申し訳ござ…」
「姫?」
げ。
見覚えのある顔。
「亦柾…」
「私の名を、覚えていてくださいましたか、北殿。愛息子の高彬殿と、こちらへは何をしに?」
「やめてよ。もうわかってるんでしょ?」
亦柾は笑った。
「前田の、瑠螺蔚姫でしたとは。これからも、末永いお付き合いを期待していますよ」
あたしに伸ばされた手を、高彬がさりげなくよけさせた。
あら?
「お久しぶりです、亦柾殿」
「これはこれは、高彬殿。貴殿はこんなところで一体何をしておられるのかな?退出するにはまだ早いと思うのだが」
…。
あたしは何か不穏な空気を感じて、そっと後ずさった。
ニコニコと無邪気に笑う高彬。
大人びた笑みを浮かべる亦柾。
「若殿から、許可をいただいたのですよ。瑠螺蔚さんを送っていって欲しいと言われましてね。なにしろ、僕と瑠螺蔚さんは、幼少の頃からの付き合いですからね。あっはっは」
「幼少、ね・・・。と、いうことはお二人はもう姉弟も同然ですか。螺蔚姫にとって高彬殿はきっと弟のようなものなのでしょうね。いや、そこまで仲がよくなられるとはお羨ましい。私など、螺蔚姫の夫とはなれても弟には到底なれませんからね。はははははは」
「あっはっはっはっは」
「ははははははははは」
「あーはははははは!!!」
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