第二章「クルセイド編」
第二十話「ツァーライト一味の闘争」
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茶なことをやってのけているのだ。上を見ても左右を見ても燃えていて、唯一前だけに炎の無い空間が広がっていた。その中を如何に魔力で強化しているとは言え全力で気温80度にも届こうかと言う空間を走り抜けているのだ。その過酷さは想像を絶するものだろう。また少しでも口を開けばその燃え盛る空気が灰を焼き尽くしてしまうだろう。よって呼吸も満足にできない。いややろうと思えば魔法を使って異次元につながるシュノーケルのようなものも作れるのだが生憎それはリオンとフェイトに使ってしまっていた。二つならまだしも三つも作るのはそもそもこの強化とトンネルの維持に関わってくる。
だがこれ程の地獄でもまだ最低限だ。大の男が歯を食いしばって耐えなければならないほどの苦行。コレでも最低限に抑えられていた。その事が返ってその生々しさをかもし出す。
(クソッ……! まだ火事は抜けられねえのか!? 天上眼を使いてえ所だがこれ以上思考を裂くのは厳しいぞ!?)
空間を越えて酸素を供給できる泡状シュノーケル。トンネルを開くためのスフィアの細かい操作。炎から二人を守るためのピンポイントな結界。どれもこれも魔法としては派手でこそ無いが針に穴を通すような作業で並大抵の魔道士ならその内どれか二つを同時に行なうだけでだけで泡を吹いて倒れてしまうほどだ。走る事など到底不可能だろう。
(しっかしまあそれでもこんな芸当ができる俺はやっぱ達人って言われてもいいレベルだよなあ?)
等と内心では嘯いてみるものの全身から滝のように流れる汗は隠せない。エレギオ自身既に激しい頭痛に、即ち酸欠と脱水症状を自覚し始めていた。それがさらに演算能力を酷使して疲弊する脳を抉る。だからと言って口を開くような愚かな真似はしないが。
(クソッタレ……息継ぎ位、させてくれよな……)
視界がぼやける、なんてことはまだ無いがそれでも立ちくらみのような物が走っているエレギオを襲う。
動いていても立ちくらみなのか、等とどうでも良いことを思う。その状態の深刻さについては余り考えない様にした。考えても仕方の無い事だと思ったから。そう考える事がもっとも危険なのだといつもはちゃんと理解しているのにも拘らずにだ。
或いはそれ程に過酷だった。それでもエレギオは折れない。何故なら。
(あんな覚悟をした奴に……覚悟以外の何で応えるって言うんだよ!?)
エレギオ・ツァーライトと言う男はこれ異常ないほどの意地っ張りだった。頑固と言っても間違いではないだろう。自分で決めた事は絶対に曲げない。燃え盛る炎にも負けず突き進んでゆく。髪が焦げるのは気にも留めない。バリアジャケットから僅かに露出している皮膚の部分が火の粉で焼けるのも涼し
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