無印編
第十一話 裏 (なのは)
[10/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
が出てくるなんて、にわかには信じられなくて、だが、翔太は、なんでもないようになのはが望んでも口にされることのなかった言葉を簡単に口にした。
「携帯の番号交換しようか」
望んでいたはずなのに。そんな風に言われたら、すぐに対応できるように説明書も全部読んだのに。
翔太からそれを提案されたとき、すぐになのはは動くことができなかった。だが、動きが止まったなのはに小首をかしげた翔太をみて、初めて正気に戻り、いつも制服のポケットに入れっぱなしの携帯を慌てて取り出した。
「あ……ちょっと待って」
ぱかっ、とピンク色の携帯を開いたなのはは慌てて携帯の電源を入れた。そう、なのははずっと携帯の電源を切っていた。鳴らない電話に意味はない。家族からも番号を登録したものの、かかってきたことは一度もない。なのはもかけたことがない。ならば、携帯が使われることはなく、電源を入れたままにすることは無駄だったからだ。
電源のボタンを押しっぱなしにして、ようやく時計と日付が表示される。
「あ、できたよ」
「それじゃ、赤外線で」
すぅ、と翔太が携帯を近づけてくる。しかし、なのはには赤外線の意味が分からない。さすがに説明書を全部読んだといっても二年も前の話だ。すっかり忘れている。
「あれ? もしかして、分からない?」
コクリと頷く。
素直に頷くのは戸惑ったが、ここで否定してもっと時間をかけることの方が心苦しかった。だから、なのは素直に頷く。そういうと、翔太は、なるほど、と頷いて、なのはに「ちょっと貸してね」と断わると、携帯をなのはの手から取り、ピコピコと操作し始めた、やがて、はい、と返されると、ディスプレイには「赤外線受信」と書かれていた。
「はい、携帯を近づけて」
「う、うん」
恐る恐る携帯を近づけると、ぴこんという音と共にディスプレイに「蔵元翔太のアドレスを受け取りました」と表示された。ピコ
ピコと携帯を弄り、アドレス帳を呼び出すと、全部で七件のアドレスが登録されていた。
『お父さん』『お母さん』『お兄ちゃん』『お姉ちゃん』『お家』『翠屋』そして、つい先ほど登録された名前がそこにあった。
―――『蔵元翔太』
そのディスプレイに新たに表示されたたった一件の名前が、なのはには誇らしく、愛おしく思えた。
◇ ◇ ◇
暴走体を封印して、翔太から褒められ、さらに携帯電話の番号まで交換し、すっかり夢見心地になり舞い上がってしまったなのはだったが、家に帰って晩御飯を食べた後に士郎の部屋になのは一人だけ呼び出されてしまった。
なんだろう? と疑問に思うものの、かつてないほどに気分が高揚しているなのはは特に気にすることもなく士郎の部屋へと
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ