無印編
第十一話 裏 (なのは)
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その声に込められたのは確かな賞賛だった、感嘆だった。それを高町なのは許容できない。
昨夜と同様に翔太に賞賛と感嘆を与えられるのは自分だけで十分だからだ。いや、それは自分だけの特権であるはずだからだ。魔法の力を持つなのはだけの。
だが、現実的に翔太は、恭也と美由希に感嘆の声と賞賛の表情をしていた。
―――どうして? どうしてこうなった?
なのはには今の現状が分からなかった。
翔太と友達になれて、自分がこの件の主役で、魔法の力を使ってジュエルシードを封印して、翔太に温もりをもらえるはずだった。
だが、今、その温もりの源である賞賛と感嘆を貰っているのは兄と姉だ。
―――嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ。
もし、もしも、このまま恭也と美由希が暴走体を倒してしまったら?
答えは簡単だ。昨日の翔太の感嘆と賞賛の言葉は二人へと向かい、暴走体が二人でも抑えられることが分かれば、父親である士郎はなのはに危険なことに首を突っ込むなといい自分は決してこの件には関われなくなるだろう。
―――取らないで……私がやっと見つけた場所なのに……
だが、その思いは声にはならない。彼らは戦っているからだ。
どうする? どうしたらいい? どうしたら、兄たちに自分の居場所を取られない?
なのはの幼い頭脳が一生懸命に思考する。結果、答えはすぐに見つかった。
―――ああ、分かった。私がもっと強くなればいいんだ。
そう、すべては弱いからだ。強くなればいい。恭也も美由希も歯牙にかけないぐらいに。彼らが足元に及ばないぐらいに。そうすれば、恭也が、美由希が戦う必要もなく、なのはだけでいい。翔太も護りながら戦えるようになれば、彼も安心だろう。
だから、だから、なのはは強くなろうと強く決意した。
「……レイジングハート、私強くなれるかな?」
―――Of course .You desire it.
レイジングハートから返ってきた答えは《あなたが望むなら》。
なるほど、ならば高町なのはは望むだろう。誰よりも強くなることを。それが、なのはが望む幸福へと繋がるのだから。
「レイジングハート」
―――All right.
もはや目的を同じくした主従の間には起動ワードなどという無粋なものは必要なかった。名前を呼ぶだけで愛機は起動する。なのはの服が分解され、穢れを知らない純白を基調とした聖祥大付属小学校の制服のようなバリアジャケットが生成される。バリアジャケットの生成が終わった後、なのはの左手には杖の状態へと変化したレイジングハートが確かな重みを持って存在していた。
昨夜のように暴走体を拘束して封印しようかと思ったが、それには兄と姉が邪魔だ。接近戦な上に高速で動いて
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