無印編
第十一話 裏 (なのは)
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意見に追従してきたなのはが初めて自分の意思を表に出そうとした瞬間だった。
もしかしたら、嫌われるかも、でも……それでも、なのはの意思が通って欲しいという願望のほうが強くなっていた。
緊張から身体中に力を入れながら、なのはは緊張から乾いた舌を一生懸命動かしながら、口を動かした。
「わ、私は……ショウくんと、一緒に、ジュエルシードを探したいっ!」
この意見が受け入れられれば、ジュエルシードを探している時間はずっと翔太と一緒にいられる。初めてできた友達とずっと一緒に。だからこそ、なのははその言葉を口に出したのだ。
なのはがこれ以上緊張することはないだろうと思いながら口にした一言に翔太は―――
「分かったよ。僕も手伝うよ」
笑って肯定の意を示してくれた。
それが、そのことが嬉しくて、なのはは最近になってようやく浮かべるようになった笑みを翔太に真正面から向けることができたのだった。
◇ ◇ ◇
気づいたら、いつの間にか家に行っていて、ジュエルシードが発動して、姉に背負われて、近くの神社まで来ていた。
本当にいつの間にか、だ。話は翔太と両親が進めるし、なのははいつものように流れに身を任せていたから。もっとも、それは翔太に全幅の信頼を置いていたからだが。
だが、ジュエルシードの暴走体が目の前にいるならやることは唯一つだ。
「いくよ、レイジングハート」
そう、自分にしかない力―――魔法の力を使って、暴走体を封印する。ただ、それだけだ。そして、また翔太に―――
だが、前に出ようとしたなのはは、兄の制止する手によって遮られた。
「なのは、下がっていろ。少しの間、ここは俺たちに任せてくれ」
「そんなっ……」
驚いた。あれは、あのジュエルシードの暴走体は、なのはが力を示すためのものなのに。あれがいなかったら、なのはは意味がないのに。
だが、兄にそんなことを言える勇気はまだなのはになかった。ここで何か言って兄に嫌われるのは、嫌だったからだ。
だからこそ、兄に従い、その場に立ち尽くすなのは。だが、直後、それは後悔に変わる。なのはは兄の制止を無視してでもレイジングハートを起動させ、昨夜のようにさっさと封印するべきだったのだ。
「……うそ……だよ」
半ば呆然としたような声がなのはの口からこぼれた。
なのはの目の前で繰り広げられるのは、兄である恭也と姉である美由希が昨夜の思念体とよく似た暴走体と互角に戦っているところだ。ダメージは与えられていないのだが、見ているだけなら確かに互角に見える。
そして、なのはの耳は隣で同様に見ている翔太の口からこぼれた言葉を拾ってしまった。
「すごい……」
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