無印編
第十一話 裏 (なのは)
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とができた。
すぐ泣いてしまうような情けない女の子と見られたくなかったから。それは、せめて蔵元翔太の前では、良い子でありたいというなのはのせめてもの抵抗だった。
◇ ◇ ◇
初めての経験だった。いや、誰かとお弁当を食べることではない。少なくとも一年生の頃はなのはも誰かとお弁当を食べるようなことはあったのだから。二年生になってからは、あまり記憶がない。教室内にいても、みんなが仲良くお弁当を食べている姿が、目に入るのが嫌で、抜け出していたから。初めてだったのは、こうして会話しながら、お昼を食べるという光景がだ。一年生の頃は、確かに誰かと食べていたが、会話はしていなかった。いくらなんでも、相手が言ったことにただ頷いているだけの行動を会話とは呼ばないだろう。相槌というのだ。
だが、今日は、違った。翔太はわざわざなのはに話しかけ、答えを待っている。この状況に慣れておらず、舌が回らないなのはは、まごついてしまうが、それでも翔太はなのはが答えるのを待っていた。初めて、なのはは会話らしい会話をしながら昼食を食べたのだった。
しかしながら、昼食という時間は永続的に続くわけではない。当然ながら、弁当が空になれば、その時間は終わってしまうわけで、終わると、次はお互いに自己紹介に移っていた。その中で、なのはは単純に自分の名前ぐらいを言えばいいか、と気楽に考えていたのだが、途中、翔太がとんでもないことを言い、なのはの度肝を抜いた。
「友達は僕のことをショウと呼ぶよ。だから、高町さんもフェレットくんもそう呼んでくれると嬉しい」
それは、つまり、蔵元翔太が高町なのはを友達と認めるということだろうか。
最初、意味が分からなくて、呆然としていたなのはだったが、やがて、気まずそうな顔をして前言を撤回しようとしていた翔太を見て、すぐさま正気に返り、彼の申し出を急いで肯定した。
嬉しかった。友達と言ってくれたもの、初めてできた友達が蔵元翔太のようないい子だったことも。
彼と一緒にいれば、自分もいい子になれると思ったから。彼なら、自分に色々なことを教えてくれるような気がしたから。だから、なのはは名前を許可されて、若干緊張しながら初めて名前を呼ぶ。
「う、うん……ショウ……くん」
呼び捨てはさすがにハードルが高かったのでこれぐらいで勘弁してほしい。しかしながら、なのはは自分で頬が緩んでいるのが分かった。初めての友達だ。かつて、なのはが切望して、熱望して、渇望したものだった。しかも、その相手は、ずっと理想としてきた蔵元翔太だ。文句の言いようがなかった。
だが、彼女の幸福は今までの不幸をすべて帳消しにするかのように続いた。
翔太がフェレット―――ユーノというらしい。正直、翔太と友達にな
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