無印編
第十一話 裏 (なのは)
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期待を余所にいつまで経っても翔太が表れることはなかった。
そうこうしている内に朝の始業のチャイムが鳴り響く。どうやら、朝の時間では翔太が来ることはなかったようだ。
しかし、今日という日は始まったばかりだ。そう、自分を慰めて、なのはは、翔太を待つことにした。
一時間目の休み時間―――来ない。
二時間目の休み時間―――来ない。
三時間目の休み時間―――来ない。
最初のうちは気丈にきっと次の時間こそは、もう少ししたら、と思っていたなのはだったが、だんだんと不安になってきた。もしかしたら、翔太が来ないんじゃないか、という不安がこみ上げてきたのだ。
しかし、その思いをすぐになのはは否定する。なぜなら、彼はあの蔵元翔太だ。なのはにとっての理想を体現した人だ。ならば、約束を違えるなんてことは絶対にしない。だから、なのはは次の時間はきっと、と待ち続ける。
だが、四時間目の休み時間も彼の姿がなのはの教室に現れることはなかった。
さすがにここまで来ないと、もしかして来ないんじゃないかと不安に駆られる。しかし、ならば、なぜ? という疑問が浮かび上がる。
一つの可能性としては、翔太が約束を忘れていることだが、それはありえないとなのはは断言する。憧れていたから、理想の体現だったから、一年生の頃、なのはは翔太を観察していたといっても過言ではない。そんな中、彼が約束を破るということはなかった。
もう一つの可能性としては、昨日の約束を翔太が約束と認識してない可能性だ。
―――また、明日。
なのはが思い描いた妄想の中には友人との別れ際に告げる言葉の一つではあった。なのはにとっては初めて言われた言葉で、約束と思ったのだが、それは翔太からしてみれば、日頃ありふれた言葉で、例えば、友人ではないなのはにも言うほど軽い言葉―――社交辞令に近い言葉だとしたら。
その考えに至った瞬間、ぞくっ、とした悪寒になのはは襲われた。それは考えてはいけないことだった。
昨日からなのはは帰り際のその言葉に有頂天になっていたのだ。気分が高揚していつもはかけない目覚ましまでセットして、一時間も早く登校して、昨日の一言を楽しみにしていたのに。それが、実はただの勘違いだとしたら。なのははどれだけ滑稽なのだろう。
―――嫌だ、嫌だ、嫌だ。そんなはずない、蔵元くんはきっと来てくれる。
その考えを頭から消すように左右に振る。
だが、時間は無常に流れていき、気づけば、帰りのショートホームルームさえ終わりかけていた。
早く終わって欲しいとなのはは思っていた。早く終われば、隣のクラスに翔太の様子を見に行くことが可能だから。だが、生憎ながら、このクラスの担任は話が長いことで有名だった。だから、第二学級の
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