無印編
第十一話 裏 (なのは)
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自分の部屋へと駆け出した。
◇ ◇ ◇
部屋に駆け込み、ドアを閉め、鍵を掛けたなのはは、ボスンとベットにダイブし、枕に顔をうずめて、涙を一滴流した。
つい、一時間前までは、暖かかったのに、今ではすっかり絶対零度だ。寂しかった。家族以外の誰かの声が聞きたかった。ふと、横を見てみるとそこには久しぶりにポケットから出した携帯が。
ばっ、と顔を上げるとなのはは急いで携帯を広げ、アドレスを開いて目的の名前を取り出す。
―――蔵元翔太。
なのはは、震えて指を押さえながらも、その番号を選択する。トゥルルルルという呼び出し音が鳴る。
心臓がかつてないほどに高鳴っていた。携帯電話を使うのが初めてだったからだ。それに、もしかしたら、出てくれないかもしれない。仮に出たとしても何を話せばいいんだろう。様々なことが頭を巡る。だが、三コール目にがちゃっ、という音と共に相手が出た。
『はい、ショウだけど、なのはちゃんどうしたの?』
ついさっきまで聞いていた翔太の声が携帯から聞こえた。
「え? あ、あの……どうして、私のこと分かるの?」
『いや、ディスプレイに出るよね?』
何を当たり前のことを、という感じで言われ、くすっ、という苦笑が聞こえた後に『変ななのはちゃん』、と言われた。
ちょっとした会話。ただ、それだけで先ほどまでなのはの中で絶対零度だった心の中が暖かくなった。それは、翔太の声が昨夜や今日のこととを思い出させるからかもしれないし、初めての友達だからなのかもしれない。
「へ? そ、そうなんだ」などと差し障りのない言葉を選びながら、なのはは強く思う。
―――ああ、この暖かさを絶対に手放したくないな、と。
彼女の始めての携帯での会話は十分程度で幕を閉じるのだが、それまでなのは笑って会話できたことに満足する。
それじゃ、お休み。とある種、定型の言葉をお互いに口にして携帯の通話を切る。切る直前まで耳に当てていた携帯をなのはは閉じるとそのまま愛おしそうに胸に抱き、先ほどまでの会話の相手の名前を呟く。
「―――ショウくん」
今日はなんだかいい夢が見れそうな気がした。
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